仔うさぎの涙



「すみませんね…」

乱れた前髪に指先で触れながら、金色の髪をした青年が申し訳なさそうに謝罪する。
 
フロアの一角では一台のパソコンを前に数人の男達が深刻な様子で画面を覗き込んでいた。
壁に掲げられた時計の針は既に定時を過ぎようとしている。
青年の謝罪に、一番後ろで固く腕を組んでいたハジが、ふと視線を上げて青年を振り返った。
「いえ、構いませんよ…ソロモン。直接あなたの仕事に関わるトラブルではありませんし、あなたは今年これで仕事納めでしょう?どうぞ良いお年を…」
ハジはさして関心もなさそうに、社交辞令で答えた。
それを言うのなら、ハジ自身も直接係わる仕事ではなかった。
ただ役職上…彼らはハジとソロモンの部下と言う事になる。
日頃は社長の直属として特別な仕事を任される事の多い彼らではあったが、組織図の上では一応人事部の中に籍を置いているのだ。
しかし幾ら面倒見が良いとは言え…自分には直接関係のないトラブルに付き合って残業するだなんて…。
 
しかも、こんな夜に…。
 
ソロモンは人の良い同僚に小さく吐息を吐いた。
「…早くシステムが回復する事を祈っています…。皆さんも良いお年を…」
しかし受けるソロモンの口調も、あくまで事務的な口調だ。
日本人の黒いそれに比べると随分と色素の薄い緑色の瞳が、一瞬思案に沈んだ。
そして、背を向けようとするハジに…
「……ちょっと、良いですか?」
唐突に思い出した風を装って、ソロモンはハジの腕を引いた。
まるで聞かれては困るでしょう?という様な思わせぶりな彼の態度に、ハジは渋々周囲に断るとソロモンに従った。
ソロモンは人気のないフロアの端までハジを引っ張ると、わざとらしくこほんと一つ咳払いをした。
そうしてハジに向き直る。
 
…あなたの大切なうさぎちゃんは、小夜さんと言うのでしょう?
 
これまで何度も喉の奥まで出掛かった台詞を、しかしソロモンは今回も口にする事が出来なかった。
正直なところ、彼自身もその件に関しては自分がどう振る舞うべきなのかずっと深い迷いの中に居る。
それを確かめたところでどうすると言うのだろう…。
少し話をした程度で、勿論彼女との間に疾しい事があった訳ではない。
しかし、スラスラとハジにそれを打ち明ける事にはどこか躊躇いがある。
それを話すには、あの野薔薇屋での一件を話さなければならない。
どうやら彼らが人知れず露天風呂で逢瀬を楽しんだ事に気付いている事も、話す破目になりはしないだろうか…。
小夜は自分とハジが同僚である事に当然気が付いている筈なのに、彼にはまだその事を話していない様子だった。
強いて話す程の事もないと言えばそうだが…しかし。
どうして自分がここまでハジの恋人である小夜に執着してしまうのかが、ソロモン自身面白くはなかった。
堅物で、どんな美女とも長続きしなかった同僚にやっと決まった恋人が出来たのだ。
本当なら盛大にからかって、話のネタにでも何にでもすれば良い。
小学生でもあるまいし…仲良しの親友です…とは言えなくとも、少なくとも仕事上では深く関わりを持つ相棒だ。今までなら軽くそれ位の冗談には互いに付き合ってきた。
少なくとも、そんな事で躊躇するソロモンではなかった。
派手なところはないけれど、小夜はとても清楚で可愛らしい。まだ十八歳と言う事だから、きっとまだまだこれから美しく花開く事だろう…。
どんな花が咲くのかは…正しく今目の前に居る男の手にかかっている様なものだ。
それが、面白くない…。
 
……彼女の事を、好きになってしまったのだろうか…。
 
まさか、…この自分が…?
 
「どうかしたのですか?」
怪訝な視線で自分を見る同僚に、ソロモンは言葉を切った。
「…………。いえ…」
「用がないのなら、戻りますよ…」
「ああ。いえ、そうではなくて……今夜はクリスマスイブですけど…彼らに付き合って残業などしている余裕があるんですか?」
意味深なセリフ。
沈黙が二人の間を満たした。
しかし、…ハジはソロモンの言わんとしている事を汲んで仕方なく答えた。
「…これも仕事の内ですから仕方ありませんよ…」
「……しかし」

それで彼女は…?
最後まで言わずとも、ハジはソロモンの言いたい事を察していた。
「……予定より帰宅が遅くなるのは本当に申し訳ないと思いますが…。彼女には早々に連絡を入れておきましたから…」
そこまで聞いて、ソロモンは『そうですか…』と踵を返した。
何も自分が彼らの仲を心配する事はない。
彼らが喧嘩しようが、仲を深めようが…自分は部外者なのだから。
しかし、ソロモンにしてみれば、恋人達の聖夜とも言うべきクリスマスイブに残業を優先すると言うハジの態度がまるで信じられなかった。彼は日頃、目に入れても痛くない程に彼女の事を溺愛している癖に、こんなところで自分の業務には直接係わりのない部下のトラブルに付き合って彼女を一人にするだなんて…。
付き合い始めて、最初のクリスマスだと言うのに…。
自分とは関係ないと言うのに、ソロモンはどこか苛ついた気分で…つい口を滑らせていた。
「果たして…小夜さんはそれで…」
………納得しているでしょうか?
彼女の名前を口にした途端、しまった…と思う間もなく…ハジの表情が一変する。
「…ソロモン、どうしてあなたが小夜の名前を知っているのですか?」
ハジがそれを聴き洩らす筈はなかった。
切れ長の目が一層鋭さをました様に感じるのは、気のせいではない。
何しろ、ハジ自身はどんなにソロモンが尋ねようと小夜の名前を明かさなかったのだから…。
最早誤魔化す事は不可能に思われ、ソロモンは致し方なく開き直りの様にハジに向き直った。
「…小夜さんから…僕の事は聞いていませんか?」
「……………いや」
「偶然ですよ…。ほら彼女…アルバイトしてるでしょう?S駅の傍の小さなカフェで…。僕は客で…彼女はアルバイト…こんなに社に近い所で働いているのですから…偶然に知り合ったって別におかしくはないでしょう?」
ハジが聞きたい事の答えにはなっていないのだろう…表情が厳しさを増したが、ソロモンはそんな事は一向に構わなかった。むしろ、もう彼らの秘密を知っている事を隠さなくても良いのだと、不思議な解放感が彼を支配している。
「…なるほど?それでどうしてそのアルバイトの彼女が、私の恋人であると?……小夜が話したのですか?」
さも当然の様に彼女を『小夜』と呼び捨てにするハジが癇に障る。
「そこまであなたに報告する義務はありませんよ…。僕達に今のところ疾しい事は何一つないのですから…」
ハジは苛ついた様に胸の前で腕を組み直した。
「当たり前だ…」
「……小夜さんの口から僕の事は聞いているかと思っていましたけど…」
ちらりとハジを視線で射る。
「聞いて無いんですね…」
ハジは真っ向からそれを受けて睨み返していた。
「……………小夜にとってあなたは話す程の存在じゃないと言う事でしょう?」
「…そうですね。…それとも彼女の方には疾しい気持ちがあって言えないのかも知れませんよ…」
くすりと笑みを零してみせるソロモンに、ハジは一瞬だけその形の良い眉をぴくんと上げて、しかしすぐにいつもの無表情に戻った。
「あなたのその自信過剰はいつも横で見ていていっそ気分が良い程ですが…」
「小夜さん、真っ直ぐで純情で、野に咲く花の様に可憐で……。…今まで僕の周りにはいなかったタイプです」
取ってつけた様なわざとらしい台詞だが、ソロモンは本心でそう例えていた。
「…話にもなりません」
言い捨てる様にして、その場を去ろうとするハジの背中に、ソロモンはゆっくりとした口調で続けた。
「…自信過剰はあなたの方ではありませんか?ハジ…。十八歳の女の子の気持ちなんて、秋の空以上に移ろいやすいものですからね…」
「……一体何が言いたいのですか?」
素直だという点では、彼らは良く似ているのかもしれない。
そう…自分に比べればハジは随分と素直な反応を返してくれる。
ソロモンは、今のこの気持ちを上手く説明する言葉を持たなかったけれど、自分の中に…それを本能の様に納得している自分も感じている。
「……あなたにとっては小夜さんが最後の女性かもしれない…。しかしまだ十八歳の小夜さんにしてみれば、あなたは初めての男でしかないと言う事ですよ…」
「…………………」
「僕なら、クリスマスイブの夜に彼女を一人にさせるような真似はしませんよ…」
捨て台詞を残し、ソロモンは今度こそ本当に背を向けてフロアを出て行った。
 
 
□□□
 
 
小夜がそのメールに気付いたのは、たまたま店の裏のロッカーに戻った時だった。
いつもなら仕事中気に掛けもしない携帯電話。
何気なくハンカチを取ろうと鞄を開くと、ポケットに入れてある携帯がぴかぴかと弱い光を放っていた。
よくよく見るとそれはハジからのもので…。
急なトラブルで帰宅が遅れるので先に食事を済ませておいて欲しいと言う内容のものだった。
彼らしい几帳面な言葉で小夜に対する謝罪がその後に続いている。
味気ない携帯メールの文字を目で追いながら、世間がクリスマスイブだからと言ってつくづく社会人にとっては何の関係もない話なのだと言う事が身に染みる。
学生ならば当然もう冬休みに入っている。しかしクリスマスと言う理由で休みになる会社はない。
恋人と迎える初めてのクリスマスに甘い期待を抱いてしまうのは年頃の女の子としてはごく当り前だが、しかしその日にハジが会社を休む事が出来ないと言う事も、もう随分前から解かっていた。小夜も納得している。
小さなカフェとは言え小夜のアルバイト先も客商売で…たった一人のアルバイトとしては当然クリスマスイブだからという理由で休ませて欲しいとは小夜には言えなかった。
だから充分にハジと相談した上で、クリスマスのデートは週末の土曜日にしようと決めていた。
今日は仕事なのだから、クリスマスイブは関係ない…。
それでも、今朝ハジは玄関先で見送る小夜に『今夜はなるべく早く帰ります』と気を遣ってくれた。
 
『デートは無理でも、せめて夕食は一緒に食べましょう…クリスマスケーキを買って帰ります』
 
そう言ってくれたのは、今朝の事なのに…。
 
仕事の急なトラブルと言われたら、小夜には返す言葉が無い。
仕方なく、小夜は『大丈夫だから心配しないで…ハジこそお疲れ様…』と彼を気遣う返事を返しておいた。
何より、トラブルに巻き込まれているハジが一番大変な事も小夜は充分に解かっているつもりだ。
本当は少しだけ早くアルバイトを切り上げさせて貰って、ハジが帰宅する前に夕食を完成させておくつもりだった。クリスマスのディナーなんてとても作れそうになかったけれど、日頃食べている様な料理も盛り付けを変えれば少しはクリスマスっぽく出来るだろうと、小夜なりに色々と考えたのだ。
茹でたブロッコリーを積み上げてクリスマスツリーを作ろうとか…。
ポテトサラダを丸めて雪だるまにしようとか…。
本当に些細な、子供っぽい発想かもしれなかったけれど、それでもきっとハジは笑ってくれると思った。
つい先程まで、頭の中であれこれ楽しく予定を立てていたと言うのに…。
ハジの驚く顔を想像して浮かれていた分、そんな自分がどこかみじめな気分になって…知らず表情が曇り、鼻の頭がつんとする。
 
泣いちゃ駄目…。
泣く程の事じゃないじゃない…。
 
それでも、ほんの少しだけ滲んだ涙を小夜は早速取り出したハンカチで押さえ、鏡で何とか笑顔を浮かべて自ら確認すると、小さな控室を後にした。
 
 
何事もなかったように自分の定位置に戻る。
丁度客足が途絶えたところだったのだ。
良かった…まだ新たな客が入って来た様子はない。小夜は何かしていなければ落ちつかない様な気持で、新しいクロスを取ると汚れてもいないカウンターの上を丁寧に拭き直した。
クリスマスと言う事もあって、店内は華やかな装飾が施されている。それぞれのテーブルに飾られた一輪ざしには赤いバラ、そして小さな炎を揺らすキャンドルがテーブルに優しい光の影を落としていた。
目の端に映る小ぶりなクリスマスツリーからさっと目を逸らす。
 
二人の部屋に飾ったクリスマスツリーは、小夜が見上げる程もある。
広いリビングにも見栄えのするそれは、二人で選んだものだ。
ウィンドーショッピングの途中、玩具売り場で『あれも素敵!これも素敵!』とはしゃぎながらクリスマスツリーを見ていた小夜に…ハジは唐突に『持ち帰るのは難しそうですから配達して貰いましょう…』と笑った。
クリスマスツリーを買うなんて出掛ける時には一言も話していなかったのに…まさかその場で購入を決めてしまうとは思っていなかった小夜は、目を丸くして驚いたけれどとても嬉しくて…。
小夜が遠慮がちに控えめなサイズのツリーを選ぶと、リビングが殺風景だから…と言う理由で、ハジはその店で一番大きな180センチというサイズのモミの木を選び直し、それに見合う長さのLEDライトを棚から取り出した。
LEDライトも様々だ。
色々悩んだ末に一番シンプルな無色のライトを選び、オーナメントは華やかな赤色と金色で統一した。

素直に楽しかった。
クリスマスツリーを選ぶのも、一緒に飾るのも…。
180センチもあるクリスマスツリーの天辺は中々うまく小夜には手が届かなくて、それなのにハジは何事でもない様子で小夜の手から一番先端に付ける大きな金色の星型のオーナメントを受け取ると難なくそれを飾ってくれた。
いつも隣に並んで歩くのに、手だって繋ぐのに…勿論それ以上の事だってすると言うのに…。
小夜はそんな何気ない彼の様子に変に胸がドキドキして…ハジを改めて男の人だと意識して…。
見上げる長身も、大きくて指の長い掌…明らかに女性とは違う無骨な関節…それでもハジの手は見惚れるほど綺麗で…何事も無いと言うのに、知らず頬が赤らんでいた。
 
考えてみれば、何も今日のクリスマスイブに関わらず、もう随分とクリスマス気分を楽しんだ筈だ。
だから、別に今日一日くらい…。
それなのに、どうしてこんなに寂しい気分になってしまうのだろう…と、気分を一新するつもりで小夜が顔を上げると、ちょうど入口のドアがカランコロンと優しい音色を立てた。
「いらっしゃいませ…」
条件反射の様に小夜は声を掛ける。
そして、気不味く立ちすくんだ。
 
そこには見覚えのある金色の髪をした青年が立っていた。
 
 
ソロモン…という名前だっただろうか…。
彼はゆっくりとコートを脱いで、手近な席に着いた。
たった一人のホール係である小夜は逃げる訳にもいかず、彼の前に水とおしぼりを運んだ。
小夜が、どうぞ…と勧めると、彼は嬉しそうに微笑んだ。
「良かった…」
何がとも言わずにただ良かったと言う彼につい小夜が不審な目を向けると…ソロモンは『運が良ければあなたに会えるかも知れない…と思ってここに来たんです』とさらりと言ってのける。
「ご注文は?」
「…では、コーヒーを」
「温かいのと冷たいのがありますけど…」
つっけんどんに、まるでうどんの注文を聞いているような受け答えだった。
「…温かいものを」
「少々お待ち下さい…」
なるべく事務的に小夜はそう告げて、オーダーを通す。他に客がいればもう少し忙しそうにも出来るのに、この男はどうして空いた時間帯を狙ってやってくるのだろう…。
程なく良い香りを漂わせるコーヒーが入り、仕方なく小夜は再び彼の元へ向かった。
テーブルにコーヒーを置く、ただそれだけの事。
以前の様に水を零したりする事が無い様に、慎重に小夜はソーサーの端を持ってテーブルに並べた。
ミルクと砂糖そして伝票を置くと、頭を下げて踵を返す。
そんな小夜に臆する事無く、ソロモンは小夜に再び声を掛けた。
「小夜さん…アルバイトは何時までですか?…もしこの後時間があるなら、一緒に食事でもどうでしょう?」
「止めて下さい。この後、時間なんてありません」
「…そう?……でも、彼は今頃残業でしょう?」
「…………」
ソロモンの口から出た台詞に、小夜は言葉を失う。
どうしてそんな事を知っているのだろう…。

偶然に…口から出まかせを言ったの?

それとも…?
けれど、自分がハジと付き合っていると言う事はまだ知られていない筈だった…。
その思いは素直に小夜に表情に出たようだった。
「…知っていましたよ。貴女の大好きな彼はハジなんでしょう?………僕は彼と一緒に働いているんですよ、しかも同じ役職で…貴女よりずっと付き合いも長い…」
「…………ど、…して?」
彼の前で自分は無意識にハジの名前を呟いただろうか…。
そんな筈はない……と思いたい。あんなに気を付けたいたのと言うのに…。
「……割と勘が良い方なのです」
しかし、ソロモンは小夜の思いを余所にはぐらかす様にそう答えただけだった。
「…今夜、彼とデートの約束でもしていたのではありませんか?……本当は残業する必要なんてないんですけどね、彼。形だけですけど僕達にも部下がいまして、今回は部下のトラブルなんです。…面倒見が良いのも結構だけれど、クリスマスの夜に恋人に寂しい思いをさせるようでは…正直僕は男としてどうかと思います」
「…そ、そんな事。私、彼のお仕事の事情なんて解からないし、別に今夜特別な約束をしてた訳じゃないもの…」
本当は『一緒に夕食を食べる』約束はしていたのだけれど…。
それはクリスマスの約束の内には入らないだろう。
「うん、つまり…それは。この後貴女はフリーって事でしょう?」
「それでも、あなたのお誘いには乗れません」
「そうですか…残念ですよ。本当に…。嫌がる女性を無理に誘う様な真似はしませんけど……。こんな夜に一人にされたら貴女が寂しいんじゃないかと思って…」
「……何がですか?」
「………折角のクリスマスイブなのに…。それに…僕なら…彼の様に貴女にそんな悲しい顔はさせませんよ…」
彼は親切でこんな事を言いに小夜の元へわざわざ訪れたと言うのだろうか…。
だとしたら、本当に大きなお世話だ…。
何も反応を返す事が出来ない。
「……小夜さん?」
その後の事は、まるで他人事のように…ただ淡々と流れてゆくばかりだ。
 
 
□□□
 
 
玄関のドアを開けると、どっと全身から疲れが溢れて…小夜はハジに買って貰った大切なコートをダイニングチェアの背に掛けると着替えもそこそこに、一人分の食事を準備する気にもなれないまま…冷蔵庫から1リットルの牛乳パックを取り出すと大きめのマグカップに注いだ。
電子レンジにカップを入れて、牛乳の温めボタンを押す。
パントリーの棚からおやつ用に買ってあった菓子パンを取り出すと、無造作に薄いビニールの袋を破り、中に甘いクリームが入っているそれをキッチンに立ったまま一口頬張った。
チン…と電子レンジが高い音を立てて牛乳が温まった事を知らせる。
優しい甘さが口中に広がったけれど、どこか味気ない。
どうしてこんな事になってしまったのだろう…。
本当なら今頃、二人で夕食を食べている筈だったのに…。
心の中で何度も繰り返し反芻してみる。
ハジが残業なのは寂しかったけれど、仕事なのだから仕方がない。
しかし…ここまで小夜の気持ちが落ち込むのは、それだけが理由ではなかった。
 
さっき、ソロモンは何と言ったのだったろう?
『折角のクリスマスイブなのに……』
ううん、そこじゃない。
そこではなくて…。
小夜はどこか他人事のようにソロモンの台詞を思い返す。
そして彼が別れ際に言った一言に、ずきんと胸が痛むのを自覚した。
 
『…彼は誰にでも優しいんですよ。何も貴女が特別という訳ではありません…』
 
そしてこうとも言ったのだ。
 
『……僕は今までに彼が付き合ってきた沢山の女性を知っていますし…』
 
だから、どうだと言ったのだろう?
小夜の記憶はどこか曖昧になってしまっている。
それくらい、ソロモンの言葉に動揺していたと言う事なのだろうか…。
 
「ハジが…誰にだって優しい事くらい…私だって知ってるよ…?」
 
誰にともなく、小夜は自分に言い聞かせる様に呟いていた。
そんな彼だからこそ、自分はハジの事を好きになったのだ。
彼の優しさが仮に自分に向けられるだけのものであったとしたら…きっと自分はこんな風にハジを信じる気持ちにはならなかっただろう…。
それに…ハジにとって自分が初めての相手でない事くらい…。
小夜が知らないだけで、彼はもっと大人の恋愛を沢山経験しているのだと言う事も…。
 
そんな事、当たり前じゃない…ハジは大人の男の人なんだもの…
 
泣いちゃ駄目…。
 
泣く程の事じゃないよ…。
 
ハジは、ちゃんと私の事…見ててくれるんだから…
 
小夜はそう自分に言い聞かせ、ふとリビングに向かうと足元のスイッチを入れた。
まだ薄暗いリビングにぱっと華やかなクリスマスツリーの姿が浮かび上がる。
 
 
昨夜はとても楽しく嬉しい気持ちで見詰めたクリスマスツリーが、どこか歪んで見える。
 
「やだ…」
 
小夜は知らず知らずのうちに自分が泣いていた事に気付き、ぐいと手の甲で瞼を拭った。
とぼとぼとキッチンに戻ると、小夜はもう一口クリームパンを頬張った。
拭った筈の涙が頬を伝って、仄かに涙の味がする。
 
ハジはまだお仕事してるんだから…。
 
懸命に涙を堪えて黙々とクリームパンを頬張ると、半分ほど食べたところで慌ただしく玄関のドアが開く音がした。玄関のドアを開けられるのはハジしかいない。
小夜は慌ててもう一度涙を拭うと、何事もない風を装った。
時計を見るとちょうど九時を少し回ったところだった。
トラブルだと言うから、もしかしたら彼の帰宅は深夜に及ぶかもしれないと思っていたけれど、それほど重大事には至らなかったという事か…、それなら越した事はないが…それとも小夜の為に仕事を切り上げてくれたのだろうか…。
何も悪い事はしていないと言うのに、小夜の胸はドキドキと鳴った。
彼にしては珍しくバタンと乱暴に廊下に続くドアが開き、コートを着込んだままの彼が大股で入って来る。
辺りを見回す様にして小夜の姿をキッチンに見付けると、少し驚いた様子で歩み寄る。
「小夜…」
「…お、お帰りなさい。…思ったより、早かったね…。もっと遅くなるかと思って…私…」
まるで言い訳をするかのように、小夜は一気にまくしたてた。
ハジは小夜の姿に少し胸を撫で下ろした様だった。
先程よりは幾分落ち着いた様子でもう一度小夜を呼ぶ。
「小夜…。…すみません、今夜はもっと早く帰るつもりだったのですが…」
「仕方ないよ。…お仕事なんだもん。…気にしないで…。それに、残業にしては早く帰って来てくれた方じゃない…」
ハジはそれには答えず、小夜が手にしたクリームパンに視線を留めると柔らかな笑顔で問い掛けた。
「まさか、それが夕食ですか?」
「…ん。だって…一人でご飯作って食べる気になれなくて…。でもおいしいよ…ちゃんと牛乳も温めたし…」
そっと差し出されたクリームパンに、ハジは身を屈めるようにして被りついた。
唇の横に付いたクリームを、親指の平で拭う。

「…甘い」
日頃甘いものをそれほど好まないハジにとっては格別の甘さだったのかも知れない。
「美味しいでしょ?」
小夜がそう尋ねると…じっと身を屈めてハジが小夜を覗き込み…何事か言いたげに唇を開きかけたものの、しばし躊躇ってそれを断念すると、赤くなった小夜の目元をそっと唇で吸った。
「…微かに、涙の味がします…。小夜…」
ハジの青い瞳が、尚更心配げに小夜を見詰める…その真っ直ぐな視線に耐えかねて、小夜は俯く様にして視線を逸らしていた。
「寂しい思いをさせて、申し訳ありませんでした。今夜は…急な事で…」
差し出された指先がそっと小夜の頬に伸ばされると、外から帰宅したばかりの彼の指先はひんやりと冷たい。
けれど労わりに満ちた優しい手付きで小夜を労わってくれる。
「良いの。私は大丈夫だから…。ね?大丈夫ってメールしたでしょ…」
「それでも、…こんな風に貴女が一人で…リビングの明かりも点けずに…。小夜…」
思いがけない小夜の涙に胸を痛めた様子で…衝動的に抱き締めようとする男の腕を、小夜は無意識にするりとかわした。
「…小夜?」
「平気。平気だから…優しくしないで…」
 
『貴女が特別という訳では…』
男の言葉が小夜の脳裏に蘇っていた。
ちくりと胸が痛む…。
 
「…どうしてそんな事を言うのですか?…こんなに目を赤くして…」
どこまでもハジの瞳は誠実な色を湛えている。
そんな彼にこんな態度を取って良い筈がないと思いつつも、小夜はどうしても胸のつかえを取る事が出来なくて、とん…と小さくハジの胸を拳で叩いた。
そのまま、白いシャツの生地を小さく握りしめる。
「……ちょっと、寂しかっただけ…。私の我儘なの…」
「…我儘だなんて…」
 
『本当は残業する必要なんてないんですけどね…』
 
ソロモンが何と言おうと…、それがどんな状況であれ…ハジにはハジの理由があって残業したのだ。
そんな事で涙を見せてしまうのは、子供じみた自分の我儘に過ぎない。
それでも、一度だけどうしても問い質さずにはいられなかった。
あの男の言葉が深く胸の奥に突き刺さっている。
「……どうしてもハジが残らなくちゃいけないお仕事だったの?…一緒にご飯食べようって約束してたのに?・・・私、楽しみにしていたのに…」
そんな滅茶苦茶な理由で彼を問い詰めるつもりなんて、爪の先程も無いのに…。
とん…とスーツの胸を拳で叩いた。
ポロリ…と涙が頬を伝う。
 
こんな事で、泣いちゃ駄目…。
泣く様な事じゃないのに…。
 
ハジは小夜の涙に心を痛めた様子で眉間を寄せて・・・少しだけ思いを巡らせるような表情を覗かせた。
やがて…ぽつりと語り出す。
「…直接自分の業務とは関係ありませんでしたが…しかし役職上私は彼らの上司です。放って帰る訳にはいかないでしょう?小さなトラブルの一つがやがて全体に及ぶ事もあり得ます。それに…私は入社当時僅かの間でしたがシステム部に在籍していた事もあって…彼らより多少はその辺りの事情に詳しかったのですよ。…今回のトラブルはパソコンのシステム上のもので…」
ハジは小夜の目を真っ直ぐに見詰めてそう説明した。
「……うん」
そんな社の内部事情に、小夜だって口を挟むつもりはない。
ただ、寂しかったのだと…伝えたかっただけで…。
「…小夜には、本当に申し訳ない事をしてしまったと思っています…。それでも、組織の中で働いている以上はどうしても避けられない事もありますし、プライベートが後回しになってしまう事も時に避けられません。…この先も、きっと…」
こういう事はある…と言いたいのだろう。
「ちゃんと……解かってるから」
大丈夫とハジを突き返す…しかし男の腕は強引に小夜を抱き締めていた。
「……クリスマスイブの夜に、早く帰りたいと思うのは何も私だけではないでしょう。…部下の中には新婚の者もいましたし、小さな子供が家で待っている者もいる…システムトラブルを私一人でどうこう出来ると思い込むほど自惚れるつもりはありませんが、それでも何か…役に立てるかも知れないと思ったのです」
それを聞いた途端に、顔から火が噴くほどの恥かしい思いが小夜の中を駆け巡った。
 
そうだ。
ハジは社会人として、一人前の責任を負って組織の中で働いているのだ…。
それもあんな大きな会社で、沢山の人の上に立って…。
組織として…自分の携わる分だけではなくて…ハジはちゃんと部下のプライベートまで気を配れる人なんだ……。
 
「…ごめんなさい。…私、ちゃんと、解かってるから…。だから…ただの私の我儘なの…」
小夜はコートも脱がないまま小夜を抱き締めてくれるハジの胸にぎゅうとしがみ付いた。
 
ハジは優しい。
それは多分自分だけに向けられるものではなくて…、彼を囲む全てに等しく向けられるもので…。
だから…。
だから小夜は、そんなハジが堪らなく好きなのだ。
ほんの少しの寂しい気持ちと、その何十倍もの恋人に対する愛しさが、小夜の心の中でざわざわと揺れた。
こんな…この程度の事で…こんな風に泣いてハジに心配を掛けてしまうなんて…。
自分の幼さをはっきりと示された様で、小夜は居た堪れなかった。
けれどハジはまるで幼子にそうするように、よしよしと何度も小夜の背中を撫でては強く胸に抱き締めてくれる。
ハジの胸に抱き締められると、小夜にとってここは他のどこよりも安心出来る…癒される場所だ…。
一度咳を切った涙はぽろぽろと頬を濡らし、ハジはそれを四角く畳まれたハンカチで丁寧に拭ってくれた。
 
言葉なんて要らない。
こうして真っ直ぐに自分を見て、小夜を抱き締めてくれるハジを…自分は心から愛しているのだから…。
 
小夜が落ち着いて…もう一度その広い胸に甘える様に頬を押しつけた時、ハジが囁くように問い掛けた。
 
 
「小夜。…ところで…何か私に話す事はありませんか?」
僅かに緩めた腕の中できょとんと見上げる小夜を、ハジはじっと見詰め返した。
「…な…何?……話す事なんて…」
無いよ…と言いかけた小夜の脳裏に、あの眩しい金色の髪がちらついた。

話しておくべきなのだろうか…。
それとも…。
小夜の心の迷いはすぐに表情に出てしまったようだ。
ハジは『何かあったのですね…?』と尚更強く追及するように小夜を逃さない。
「…あ、あの。……」
小夜が口籠ると、ハジはゆっくりと話し始めた。
「今日、恋人がいるのにクリスマスイブに残業する事について、同僚に注意されました…。ソロモンと言う男なのですが…」
「……………………」
小夜の沈黙に、ハジは続ける。
「…話した覚えも無いのに…貴女の名前を知っていたので…」
ハジは自分と彼の仲を疑っていると言うのだろうか…?
まさかそんなことはあり得ないと言うのに…?
やっぱり最初に話しておけばよかったのだろうか?
ソロモンがハジと同じ会社で働いているらしいと気が付いた時に…。
しかし、あの晩…ハジと初めて肌を重ねたあの晩…小夜の頭からは完全にソロモンの存在は消えていて…本当にそれどころではなかったのだ。
「………あ、あの。……お店のお客さんなの…。私、ぼぅっとしてて…前に…お水を零してあの人のスーツを濡らしてしまった事があるの…それで…」
小夜に疾しい気持ちなどある筈がないのに、言い訳の様に聞こえてはいないだろうか…。
本当にずっと、今日再会するまで…ソロモンの事は忘れていたのだ。
別にハジに対して隠していた訳ではない。
「彼の言っていた事は、本当の様ですね…」
それは独り言の様な小さな呟きだった。
「………ハジ?」
「いえ。何でもありませんよ…。貴女と彼が知り合いだなんて……予想していなかったので、少し驚いただけです。世間は狭いものですね…」
「知り合うなんて。…隠してた訳じゃないよ……」
知り合うなんて、大袈裟なものではない。
「解かっていますよ…。貴女は器用に嘘が付ける人ではありませんから…」
ハジは他の事を考えている様に…少しだけ遠くを見る様な、座った目をして…そう小夜に答えた。
 
 
「……もしかしたら、夕方彼が貴女のバイト先へ…押し掛けたりはしませんでしたか?」
長い腕が小夜の体をふわりと開放し、漸くコートを脱いでハンガーに掛けながら背中越しに問い掛ける。ジャケットを脱いでネクタイを緩める様を…小夜は返事をする事も忘れて…どこかうっとりと見詰めていた。
ハジはそんな小夜に苦笑を漏らし、答えを追求する事を諦めた様子で…会話はそこで途切れた。
リビングの照明はまだ点けていない。
ぴかぴかと点滅するクリスマスツリーの電飾が、カーテンを閉めないままの暗い窓ガラスに映り込んでは華やかさを増した。
誘われる様に…小夜が無意識に伸ばした指が彼の白いシャツの背中に触れた。
視界を遮る広い男の背中…そっと触れる優しい指先の感触に職場の匂いを漂わせたまま振り向いたハジは、じっと見上げる小夜の頬にそっと指を差し伸べた。
堪え切れない感情の波に押し流される様に、逃れられない様反対の腕で小夜の腰を捉えるとぐいと抱き寄せる。
小夜は当然の様に目を閉じていた。
ゆっくりと下りて来る唇の気配。
しかし、吐息が小夜に触れる直前…ハジは突然小夜の体を突き放した。
「小夜!!…ちょっとすみません!」
慌てた様子でそう言い残し、呆然とする小夜を置いて一人慌ただしく玄関先へ向かうと、すぐに戻って来る。
手には小さな白い紙の小箱。
どうやら靴を脱ぐ時に、玄関に置き忘れてきたらしい。
「小夜…、一緒に食べる約束をしていたでしょう?」
彼の手元を覗き込むと、その箱には直径十二センチ程の直系の可愛らしいショートケーキが納まっていた。
小さいなりにきちんとクリスマスのデコレーションが施された丸いケーキ。
ベルとリボンの付いた緑の柊の葉。
赤い服を着たサンタクロースがちょこんと小夜を見上げている。
可愛らしいケーキだ。
けれど…。
上に飾られていたらしい真っ赤なイチゴは、ころんと箱の隅に転がっていて、形良く絞られていた筈の生クリームもどこかいびつに歪んでいる。
ハジは申し訳なさそうに表情を歪めて小夜に謝罪した。
「……すみません。買いに行く途中、慌てて走ったものですから…」
それは何も特別ではない、量販店で売っている有り触れたクリスマスケーキだったけれど、店が閉店してしまう時間までに…彼はきっと慌てて小夜の為に残業を抜け出して寒い夜の街を…ケーキを買いに走ってくれたのだ。いい年齢をした大人の…こんな大きな男の人が、小さなケーキの箱を手に夜の街を走る姿を想像して、小夜はどこか胸が熱くなるのを感じていた。
こんな風にイチゴが転がる位なのだから、もしかしたら彼にしては珍しく…誰かにぶつかったり、躓いたり、転んだりしたのかも知れない。
「…ありがとう。約束…覚えててくれたんだね…ハジ…」
「いえ…。すみません、こんな時間になってしまいました…」
壁の時計を見上げれば、もう十時にもなろうか…と言う時刻だった。
ダイエットを気にする年頃としてはこんな時間にケーキを食べるなんて御法度なのだけれど…。
それでも、小夜にとってこれはハジが自分の為に買ってきてくれた特別なケーキだ。
この際、夜中になろうと食べずに眠る訳にはいかない。
「…明日にしますか?」
「…ううん、気にしない。だってハジの買って来てくれたケーキは特別だもん…」
うふふ…と微笑む小夜の目元は相変わらず赤く滲んでいたけれど…ハジはもう何も言わずそっと目を細め…優しい唇がもう一度だけ、目元を拭った。

□□□


囁かれる優しい愛の言葉。
全てを受け止めてくれる優しく穏やかな男の胸、労わりに満ちた指先。
強張っていた体の緊張を、肌の上を滑る滑らかな湯と男の指がゆっくりと解いて行く。

先程食べたクリスマスケーキの甘さが、まるで口の中に残っているかのようだった。

湯気に曇る明るいバスルーム。
普段一緒に入浴する事など無いけれど…こんな夜は離れ難くて…どちらからともなく誘う様に…今こうしてここに居る。薄らと濁る入浴剤のお陰で狭い湯船に並んで浸かっても気持ちは幾分楽で、小夜は遠慮がちにハジの胸に体を預けていた。
互いの体に火を付けてしまわない様に気を配りながら、ハジの指が労わる様に小夜を支えてくれる。
触れ合った肌から互いの呼吸のゆっくりとしたリズムが伝わってくる。



ハジが傍に居てくれたら…もう他に何も要らない…。
本当に…要らないから…。

『何も貴女が特別という訳ではありません…』

それだって…良いの。
私が…ハジを好きなんだから…。

「…小夜?さっきから、どうかしたのですか?」
「ううん…何でもない…」

ぎゅっと強く目を閉じる。
今夜はクリスマスイブ…。
仕事が休めないからって…それでも沢山のプレゼントをハジから貰った夜…。

「何でも無いよ…」

小夜は優しく包んでくれるハジの腕の中で、ソロモンの言葉を強く打ち消していた。


                                     ≪了≫





20100125
一か月遅れですみません!!
今更感満載でお届けいたします…2009年の!!クリスマスのお話…。
あの、クリスマスだからって社会人は普通にお仕事してるし、今更大人なんだから仕方ないよね…って事が沢山あると思うんですけど、
何も外でデートしたりプレゼント渡したり、お洒落なレストランでディナーを食べなくても、幸せな気持ちになれるのがクリスマスではなかろうかと思って、書き始めました。
でも、ソロモンには…クリスマスイブの夜に恋人ほったらかし(酷い表現…)で残業するなんて信じられないそうで、しゃしゃり出て来てしまいました。
…つまり今年のクリスマスはソロモンも独りで過ごすって事?(笑…)
ソロモンとハジは、別に仲が悪いと言う訳ではなくて、どちらかと言うと親しい方なんだろうと思いますけど。

ハジは、誰に対しても基本的に優しい人だと思って書いてます。
別にお節介とかじゃなくて、困っている人を見たら手を差し伸べてくれる人であって欲しいと言う願望です。
甘やかすと言うのではなく、きちん指導できる上司であって欲しい…。
(多分、ハジより年上の部下もいる事でしょう…)
特に、この話の中のハジは普通の人間で社会人なので尚更。
普段はべらべらと口数が多い方じゃないし、群れるタイプではないから、誤解を受けそうだけど…。
でもほとんだ形のみとは言え、部下がいて…彼らからは信頼されていて欲しい…と言う願望。
願望ばっかり書いてますよ…ええ。

しかし女の子は、自分だけに優しくして欲しい…とか、思う部分も否定できないと言うか…(笑)

小夜たんは、まだ学生さんなので…。
それに女の子だからついクリスマスにはしゃいでしまうけど、その辺のところはきちんとハジの事を解かってあげて欲しいなあ…。

でも、きっとハジはそんな小夜たんの我儘も笑って受け止めてくれるから、少し位は我儘言って甘えて欲しいとも思う(笑)複雑な願望…。

最後に、二人を風呂に入れるか、入れないか…ってところで一カ月近く悩みました。(そこかい…)
別に、私の脳内でこの後二人が一緒に風呂入ろうが、ナニしようが(?)話には全く関係ないのでギリギリまで省いてましたけど、なんかオチが付かなくて、結局入れました。入れたらオチが付いたのか???怪しいけど。
別にエロ心からではありませんよ(←断らなくても良いよ)
まあ、そんなこんなで(あほな話を)語り出すとキリがありませんので、これ位で…。

ここまで読んで下さいまして、どうもありがとうございます!!