優しい腕に抱かれていた。
ハジ…
直に肌が触れる事で、サヤの記憶の糸はするりと解けかけた。
夢とも、現実ともつかないふわふわとした心地好い感覚。
…これが、現実なら良いのに…
あの日、崩れゆくオペラハウスの瓦礫の下に消えた貴方。
帰って来てくれたの…?
ハジ…
サヤは夢中でその背にしがみ付いた。
けれど…
これは、夢なのだ。きっと…
だから夢から覚めたら、
この瞼を開けたら…
貴方は儚い幻のように…、頼りない霧のようにその姿を霧散させてしまう。
ハジ…
ずっとこうして貴方に抱かれていたい…
 
 
ハジ…
わがままを言って…
ごめんね…
私達…厳しくて辛い戦いの最中でしか、一緒に居られなかったね。
でも…
私…、どうしても、欲しかったの…
一人の女として、貴方に愛された記憶が…
例えそれがその場限りの錯覚であったのだとしても…、
一度きりで良いから…
自分が一人の女として貴方に愛された記憶が…。
私のわがままで、たくさん、傷つけちゃたね…。
ハジ…
ねえ…
貴方の居ない未来なんて…
私には生きる価値すらなかったの…
どんなに穏やかな幸せがそこにあるのだとしても…
ごめんね…ハジ…
 
 
 
 
暁に咲く花
 
 
 
 
 
 
 
 
 
どくん…
どくんどくん…
体内に感じる…
これは…私を抱く彼の鼓動?
いいえ…これはもっと儚くて優しい。
どくん…
どくん…
重なる鼓動がサヤを呼び覚ました。
甘い夢から強く現実に引き戻される
どくん…
どくん…
どくん…
自分のものではない…けれど確かに自分の体内に感じる鼓動。
それはとても奇妙な感覚だったけれど、心のどこかでサヤはその違和感を受け入れている。
理由はわからない。
けれど、何故だか愛しくて…堪らなくて、涙が零れた。
後ろ髪を引かれるように…、サヤが重い瞼を開けると、そこは見知った病室のベッドだった。

わた…し…?

一瞬記憶が混乱する。
自分を抱き上げていた優しい腕の感触ははっきりと体に残っているのに、その腕が誰のものであるのか…喉の奥まで出掛かったその名前が…、ついさっきまで愛しく呼んでいた筈のその名前は、やはり思い出せなかった。
すぐ手を伸ばせば、そこにある筈の答えに辿り着く事が出来ない。
体中の力が抜けてゆく、その諦めに近い感覚。
あの心地よい腕は…夢だったのだ。
時間の経過を教えるように、窓から覗く空の景色は既に夕暮れの色に染まっている。瞳は涙に濡れていて、見慣れた白い天井がぐにゃりと歪んだ。
夢の中でまた泣いていたのだ。しかしそれはもうサヤにとって珍しい事ではない。
夢を見て…
これまで、何度も何度も泣いた。
理由は解らない。
名前も思い出せないけれど、あれは…とても大切な人の記憶。
散漫とした夢の欠片は、サヤにそっと教える。
 
今の自分には何かが足りないのだ。
在るべき筈の片翼をもがれ、何処かに心を置き忘れたままで、飛べる筈もないのに……。現実はサヤの心を無視したまま、この平和を享受しろと迫る。
視線を巡らせると、ベッドのすぐ脇に心配そうな顔をして…彼女の主治医が覗き込んでいた。
「…ジュリアさん…私…?」
サヤが目を覚ました事に安堵したのか、幾分その表情を和らげたジュリアは、労るようにサヤの髪を撫でた。清潔な白衣とタイトスカート、すっきりとした胸元のカットが印象的なトップス。
歳を重ねても、彼女の穏やかな笑みと眼鏡の奥の知的な瞳の色はあの頃と変わらずにサヤを見詰めている。
「貧血で倒れたのよ…、買い物の途中に…。覚えてる?サヤ…」
ジュリアは手元のカルテに何やら書き込むと、心配したのよ…と付け加えた。
「………。私…救急車でここに?」
見た目はそっくりでも人間とは明らかに違うサヤの体を、何も知らない街の救急医に診せる訳にはいかない。だからと言って、何も知らない一般の救急車がサヤをこの小さな診療所に運ぶとも思われなかった。
表向きは街の診療所でも、ここは赤い盾の研究施設だ。
「……救急車よりも迅速なヤツよ」
「…………」
「覚えてないみたいね…。ああ、まだ動かないで…サヤ」
起き上がろうとする体を、女医は慌てて押し止めた。
「まだ輸血が終わってないの…」
見ればサヤの白い腕には赤い血液の流れる管が繋がっている。
体を起こすのを諦め、サヤは首を傾けてその何気ない景色を見渡した。
見慣れた天井、白いカーテン、窓から覗く景色、風に揺れる緑。
どれも馴染んだものである筈なのに、一旦感じた違和感は拭いきれなかった。
私…倒れたの?
………貧血…?
この前の輸血は…いつの事…?
サヤはぼんやりと記憶を辿る。
確か、前回輸血してからまだ十日と経っていない筈だ。
「早く、ないですか?…貧血なんて…」
これまで、例え輸血が二十日に一度でも、貧血で倒れるような事は一回も無かったというのに。「たまには…そういう事もあるわ…」
「でも…」
「だって、女の子なんですからね…。あなたは…」
ジュリアの少しおどけたような微笑。肩を竦めてちらりとドアの外を気にかけると、真っ直ぐに向き直ったその表情は既に笑ってはいない。
しかし、サヤを労るような瞳の色は少しも変わらず、細い指でそっとサヤの前髪を撫でた。
「ごめんなさいね、女の子だなんて言って…」
「いえ…」
「もう、女の子…じゃないわね…」
「………どうか、したんですか?私…」
ジュリアが暫し黙り込む。サヤは彼女の考え込むような横顔をじっと不安げに見詰めた。
「そうね…。私達女同士なんだし、この際何も隠さずに結論から言うけど…」
「だ、駄目だっ…」
ジュリアがそう切り出した途端…バタンッと大きな音を立ててドアが開き、カイが室内に転がり込んできた。
「駄目だ…ジュリアさん…。サヤは…」
連絡を受けて駆けつけ、ずっと廊下で聞き耳を立てていたのだろうか…。
既にOMOROを開けなければならない時間は過ぎている筈なのに…。
躓き掛けた体勢を立て直しながらカイが息を弾ませる。
「ごめんね、おつかい…間に合わなかったね…」
「そ、そんな事は良い…サヤ、お前…」
ジュリアはそんなカイの様子に厳しい口調で眉を顰めた。
「取り乱さないで…。ここは一応病室なのよ」
「…すみませんっ。でも…」
「…その慌て様…サヤのお兄さんって言うよりも、すっかり父親の域ね」
事務的にサイドテーブルに手を伸ばすと、カルテの束をめくる。
「やっぱり待ってくれ…。まだ…サヤは…」
「気持ちは解るけど…、その内自分でも気付く事なのよ。その時一人でいらない不安を抱くより、今話しておいた方が良いって、さっきそう決めた筈よ」
「まだ思い出してないんだ…。あいつだって…」
あいつ…?
「これが良いきっかけになるかも知れない…」
「ジュリアさん…」
「…って、そうは思わないの?兄貴としては…嬉しくはないの」
「それは……」
「待って下さい…」
一方的に展開する二人の会話を聞かされていたサヤは、それが自分の話なのだと我に返る。
サヤは管に繋がれ身動きの取れないまま、二人を交互に見上げ、覚悟を決めるかのようにカイに視線を止めた。
「思い出してないって…。それにあいつって…誰…?」
「あ…、ええと…。俺そんな事…言った?」
「男って馬鹿ね…」
追求された途端しどろもどろに勢いを無くすカイの脇腹を小突き、ジュリアがサヤとカイとの間に割って入る。
「あのね、サヤ。これから私が順を追って話すから、真剣に聞いて頂戴…」
ジュリアの言葉にサヤはただ黙って頷くしかなかった。
手渡された写真の背景は黒く、そして不鮮明だった。
中央に見える二つの袋。
どこかで知っているような…不思議な感覚を覚えながら、サヤはその画像に指を這わせた。
カイは自分の出る幕はないと悟った様子で、ベッドからは少し離れて会議用の折り畳みイスに座りしかし落ち着いてはいられないのか…組んだ足を細かく揺らしている。
ジュリアは手元のカルテに視線を落としたまま、それを淡々と告げた。
「サヤ…、今…あなたのお腹には命が宿っているの…。双子よ…、その白い袋がそう…。その中に小さな陰があるの…解るかしら?」
サヤは、ジュリアの言葉の意味がすんなり理解出来ず、ただ黙ってそのエコーの画像を見詰めた。右の袋と、左の袋。
確かにその白い円の中に小さな陰が見て取れる。
僅か小指の先程の陰だ。
「…赤…ちゃん?」
「そう…。大きさからすれば、そうね…人の胎児で言う10週ってところかしら」
「…………」
「前回の輸血からも間がないのに、貧血の値も高いし…、眠っている間に…悪いとは思ったんだけど、色々調べたのよ。もし、どこか具合が悪いのだとしたら困ると思って…。でも…早く判って良かったわ…」
「…私……」
サヤの戸惑う姿に頷き、ジュリアは静かにサヤの枕元に腰を下ろした。
「…ごめんなさい。一番に言うべき台詞を忘れてたわ」
「……………」
「おめでとう…。サヤ…。今がどんな状況であれ、生命の誕生は素晴らしい事よ」
それは主治医と言うより、一人の友人として心から発せられた言葉だった。
しかし、サヤにはそれを『ありがとう』と受け取る余裕はない。
「……………」
「ちょっと、突然すぎたわね…」
「そりゃそうだろ…。いきなり腹に子供がいるなんて…」
少し苛立たしげに、カイが言い放つ。
サヤはまだ何の兆しも見せない腹部に、そっと指をのせた。
実感はない。
ずっと死ぬ事ばかり考えていたような自分の体内に、いつか…命が宿る可能性があるということ自体、想像すらしていなかった。
「でも…私…。ずっと眠ってて…。妊娠なんて…」

自分を労る優しい腕。
サヤ…と呼ぶ静かな声色。
 
 
無意識に、サヤの目尻から熱い涙が零れた。
「…サ、サヤ…泣くなよ…」
サヤの涙にカイが動転したように慌ててジーンズのポケットからハンカチを取り出し、くしゃくしゃになったそれで強引にサヤの涙を拭った。
「これは私の推測なんだけど…、眠りに就く以前に、貴女のお腹にはもう受精卵があったんだと思うの。それが誰にも気付かれないまま…何らかの理由で眠っていたんじゃないかしら…。翼手はとても生命力が強いのよ…。そして、妊娠出産についての事例はディーヴァの娘達が産まれた時の一件だけ。まだまだ解らない事ばかりなの…。有り得ないなんて、誰にも言えないのよ」
「………」
「なあ、父親が誰かって…訊いても良いか?サヤ…」
「カイ…大切な事だけど、その話は後にしましょう…。今の小夜にはゆっくり眠る事が必要よ。この貧血も、妊娠している影響だと考えられるの」
カイの質問を、ジュリアが遮った。
「以前、ディーヴァが双子を妊娠した時もそうだったけど、妊娠中は通常よりもより多くの血液を摂取する事が必要だったわ」
サヤ…サヤ…
「ねえ、カイ。おかしいね…私。ちゃんと彼を覚えても居られなかった癖に、涙が出るの。嬉しくて…。嬉しいの。私のお腹に、彼の…赤ちゃん…。私…本当に嬉しいのに…私…」
「彼…って…?…サヤ…?」
夢の中で、おぼろげな記憶の中で、それでもうっすらと思い出せるのは、『彼』の優しい腕の感触と、サヤと呼ぶ声音。
静かで、穏やかな…そして時に、熱を孕んでうわ言の様に繰り返す声。
……サヤ
 
 
………サヤ
 
 
きっと自分は、『彼』を深く…深く愛していたのだろう…。
だからこんなにも、嬉しくて…切なくなるのだ。
それなのに…どうして…
愛しているのに、どうして自分は彼の事を覚えていられなかったのだろう…。
どうして、大切な筈の男の記憶を自ら封印してしまったのだろう…。
「後にしましょう…。一晩ゆっくり眠って…それからでも…」
遅くないわ…と、気遣うジュリアにサヤは首を横に振る。
「夢を見るの…毎晩…。ううん…あれは夢なんかじゃなくて、…きっと…彼は…」
 
この子達の父親…
 
 
サヤの涙は枯れる事がないかのように、後から後から溢れた。
カイはもうそれをハンカチで拭うような真似はせず、サヤの涙に濡れた顔さえ見ていられずに背を向け、既に日の落ちた窓の向こうに視線を投げた。
カイには、確かめるまでもなく…サヤの言う『彼』があの男であると解る。
きっとジュリアにも解っている。

脳裏に、氷のような美貌を湛えた青年の横顔が浮かんだ。
夜の闇を切り取ったような艶やかな黒髪も、陶器のように木目の整った白い肌も、そしてサファイアのような青い瞳の鋭さも、何一つ当時と変わらない。
確かに生きているのに、彼は永遠に青年のままなのだ。
 
 
ハジ…
 
 
窓ガラスに映る自分の姿は、三十年前とはやはり別人のようだ。
変わらないサヤとハジの姿に当時が蘇り、自分もまた当時と変わらないつもりでいても、目尻に刻まれたその皺はその三十年と言う決して短くはない年月を思い出させる。
あの日、…罪もない生まれたばかりの二人の姪を道ずれに…自ら死を選ぼうとしたサヤを説得する為、カイはあの無口なシュバリエを殴りつけた。
自分だってサヤを愛している癖に、サヤ一人の為に自分の命の全てを捧げている癖に…、あんな状況下ですら…自ら死を選ぼうとするサヤに…それでも従おうとする馬鹿な男を殴るのに、手加減などしなかった。
歯がゆくて…

お互いに深く想い合っている二人の気持ちは傍からもありありと判るのに、贖罪だの使命だの、カイには到底理解したくもない御託を並べ、お互いを見ないふりをし続けている二人が歯がゆくて…
そして、自分には小夜を説得出来ないのだと悟って…。
それが悔しくて…。
しかし…今更、青年を殴って済む話ではない。
ハジもまた、深く傷付いている。
強く握り締めた拳を、カイはやり場なく彷徨わせた。
 
永遠の時を生きる者にとって、やはりこんな感傷は馬鹿げているのだろうか…。
辛い過去も…、悲しい思い出も…、人はその全てを胸に刻んで生きてゆくのだ。
過ぎた時間は戻らず、人は刻一刻と『死』に向って年老いてゆくけれど、過ぎ去ったこの三十年と言う時の流れを、カイは無駄に思わない。
決して消えることの無い傷跡を癒してくれたのは、ささやかな日々の営みだった。
限りのある命だからこそ…、ただ真っ直ぐに前を見て生きて行くのだ。
彼らだって、その寿命の長さは人のそれと比べようが無くとも…
生まれたからには終わらない人生など無いのに…。
無駄に出来る時間など、一秒も無いのに…。
そして、ささやかな日々の幸せは彼に教えてくれた。
足元の陰が濃ければ、濃い程…、心の闇が深ければ深い程…、自分は眩しい光の下に生きているのだと言う事。
 
 
サヤのお腹の中には今も、今この時も…確かに命が育っている。
不安も戸惑いも超えて、新しい命は…、二人に呼びかけているのだ。
過去に逃げ出す事無く、ただ前を見て真っ直ぐに未来へゆくのだと。
「頼むよ…、もう…小夜にこれ以上辛い思いさせんじゃねえよ。…もうこいつの涙は沢山だ…。お前だって、小夜に笑ってて欲しいんだろ…、なんでこんな…」
…腹の子の父親はお前なんだろう…?
カイの声は震えていた。
何の為に、あんな辛い思いに耐えて戦ったのだと…
皆が幸せになる為だった筈だ。
それなのにどうしてその中に小夜とお前が居ないのだと…
振り向き様に白い壁を殴りつけ、カイはサヤに向き直った。
充血した目を瞬かせて、サヤに言う。
「小夜…思い出せよ…。愛してんだろ…お前が本気で望まなきゃ、あいつは…」
 
…あいつは救われないんだ…。
 
 
 臨時休業の張り紙をしたOMOROの奥で、カイはカウンターに突っ伏していた。サヤは、大事を取ってそのまま入院する事になった。
カイの伏したカウンターの上には飲み散らかしたアルコールのビンがいくつも転がっている。自分が飲み明かしたところで何も変わらない、それは判っていたけれど、飲まずにはいられなかった。
サヤの妊娠。
それはディーヴァのシュバリエが死に絶えた時点で、あり得ない事として忘れ去られた。アンシェルの立てた仮説では、人間や自らのシュバリエとの間に子供は生まれないとされていたからだ。
サヤを妊娠させる事の出来る男はもうこの世に存在しないのだと。
しかしそのアンシェル亡き後、そもそも、彼の立てた仮説がどういった根拠の元に立てられたものであるのかも…、そして本当に正しいと言い切れたのかどうかも…、今では確かめる術さえない。唯一つ、はっきりしているのは、今この時も、サヤのお腹の中には二つの命が育っていると言う事だ。
お腹の子供の父親は、やはりハジなのだろうか…。
いや、そうであって欲しい…とカイは願っている。
少なくとも、常に行動を共にしていたハジならば何か知っている筈なのだ。
カイは酔った勢いに任せて、声を張り上げた。
「ハァ〜ジィ〜ッ。こらぁ…出て来い!ハジィ〜」
声を荒げながら、しかし…どこかで冷静な自分が自分を見詰めているのを感じた。
酔ってなど居ない。酔ってしまいたいのに、酔えなかった。
それでも飲んだ勢いに任せなければ、とてもあの青年と対峙出来そうに無かった。
それとも、彼はもう全てを知っていて、サヤに会う事を拒んでいるのだろうか…。
「ハジ…頼むから…」
静まり返ったOMOROの店内。
軽い眩暈と共に、イスから崩れ落ちそうになるカイの体を、しなやかな腕が支えた。
「……酔ったふりは止めてください。私なら…ここに居ます」
相変わらず冷静な声。
「…どうしてお前は俺が呼べばすぐ出てくる癖に、…小夜の前には出ようとしないんだ…」
「…怖いのかも、知れません」
間髪入れず、ハジは答えた。
「小夜の何が怖いんだ…?」
黒衣の青年はその問いには応えない。ただ黙ってカイの体をイスに座り直させる。
「…もう、理由は何だっていいさ。お前が十分辛い事だって俺は解ってるつもりだ。お前がどれ程小夜を愛しているのか…昔から俺は知ってる。あれから、お前はじっと三十年も待ったんだ…、小夜が目覚めるのを…。それなのに、最愛の女が自分の事をすっかり忘れちまってたら…辛くない筈ないだろ。恨み言の一つや二つ言ってやりたくなるだろうさ…。けど…」
離れてゆくハジの腕をカイは乱暴に握って引き止めた。
「恨み言など…」
「じゃあ何だ?もう…愛してないのか?戦う必要が無くなれば、もうお前はお役御免なのか?そういうものなのか?お前と小夜の関係は…」
カイは充血した瞳で睨み付け、ハジに逃れる事を許さない。
ハジは観念したように、カイを見た。
彼の青い瞳は、まるで深い海のようだ…
どこまでも美しく澄んでいて、けれどじっと見詰めていたら、その深い海の底に引き込まれ、溺れてしまいそうな危うさが潜んでいる。
しかし、その危うさこそが、彼の魅力なのかも知れない。
サヤも、この男の深い海に溺れたのだろうか…。
永い孤独と引き換えに、彼は最愛の女性を手に入れたのか…。
カイは慌てて自分の場違いな空想を振り払った。
「彼女を愛しています。…サヤは私の全てです。永遠に…」
「だったら…」
何も問題はないじゃないか…と言いかける。
しかし、ハジの視線は、カイなど存在しないかのように…サヤとの過去を見詰めていた。
「…昔、私は彼女を酷く傷付けました。…サヤが今、私の事を忘れてしまっていると言うなら…、それが私は彼女の意思だと受け取ります…」
「なあ…ハジ…」
カイの瞳が深く探るような色を帯びて、ハジを見上げた。
「…………」
「それって…お前、サヤの事を抱いたって事なのか?…その、つまり……」
「…貴方には、関係のないことです」
「…その返事、俺は肯定と取るぞ…」
「…不愉快です」
ハジの氷のような美貌が、鋭さを増した。きつく眉間に皺が寄り、さっきは深い海のようだと思った瞳が、凍て付いた冬の空のように変わる。
けれど、カイは追求を止めなかった。
「…俺は所詮第三者だ。批判するつもりも、下世話に勘ぐる趣味もない。だけど、俺は小夜を放っておけない」
「…………」
「小夜は…妊娠してるんだ。…父親はお前じゃないのか?昼間倒れた小夜をジュリアの元に運んだのはお前なんだろ?気付かなかったのか?」
カイの台詞に、いつもは冷静を装うハジの表情が強張った。
「小夜は目覚めてからこの一年誰とも深く接触はしていないんだ。理屈じゃありえなくても…俺は腹の子の父親がお前なら良いと願ってる。もし、それが俺の勝手な想像だったら謝る。だけど…」もし二人の間に愛し合った過去があるのなら…
「………」
「せめてあいつに目覚めの血を、お前の血を飲ませてやってくれ…。夜もまともに眠れない。お前の夢を見るからだ…。今のままじゃ、とても妊娠に体が耐えられない。小夜を正しく目覚めさせる事が出来るのはお前だけなんだろ…」
「………」
「あいつ、泣いてるんだ。…お前を忘れてしまった事で、訳も解らないのに自分を責めてる。
俺は、どうして小夜がお前を忘れてしまったのかも、お前がどうして小夜の前に出ようとしないのかも解らない。だけど、いつか時間が解決するなんて悠長な事はもう言っていられない」

つい今しがたまで、抑えきれない怒気を含んでいたカイの声は急に勢いを無くした。小夜が泣いている…と告げる彼こそが涙を流しているかのようだ。
ハジの視線は真っ直ぐにカイを通り越して、遠い過去を見詰めていた。
「たった、一度だけ。彼女は酷く傷付き疲れていて、とても冷静な判断が出来ているとは思えませんでした。それでも私は、サヤを欲しいと思う気持ちを抑え切れなかった…」
「ハジ…」
「…サヤに乞われて。…いえ、彼女は私をシュバリエにしてしまった事に対して罪悪感を抱いていたので…、きっと私の浅ましい欲望にも気付いていたのです。そして…私は彼女を傷付けると解っていて、止められなかったのです。…私の中には今も荒ぶる獣が巣食っていて、時に彼女を壊してしまいそうになる。サヤを守るべきシュバリエでありながら…、私は…、これ以上彼女を傷付けるのが恐い」
固く握り締めたハジの拳が震えていた。
「ハジ…、ハジッ…」
カイはハジに向き直ると、イスから立ち上がり、僅かに見上げる青年の胸倉を握り締めた。
「浅ましくなんかないだろっ…、そういうもんだろ…男なんて…。お前は、小夜のシュバリエである前に、一人の男だろ…。一人の男として小夜を愛してるんだろ…」
そして小夜だって…
あの日、死を選ぼうとしていた小夜を説得したのはハジだ。
あの時、唇に触れようとして果たせなかったハジに、小夜は自ら口付けを求めたじゃないか…。「カイ…」
「逃げるなよ…。ハジ…。あいつがもしお前でなく、俺を選んでいたなら…、俺は腹の子の父親が例え誰であっても小夜を守る。でも小夜は俺では無く、お前を選んだんだ…。お前が小夜を傷付けたと言うのなら、その傷はお前が癒すんだ、お前にしか癒せないだろう?」
そしてお前の傷を癒せるのも、また小夜だけなんじゃないのか…?
「カイ…」
「早く…行けよ」
カイはきつく目を閉じて天井を仰ぐ。
今頃酔いが回ってきたのか、瞼の裏が焼けるように熱くて…。
なんて、手の焼ける奴等なんだ…。
ハジ…
早く、小夜の元に行って…
そして、二人で帰って来るんだ…
ここへ…
音も無く青年の気配が消えるのを、カイは身動ぎもせず見送った。
 
 
 
 
月の光は懐かしい。
月の青く透明な光は、全てを優しく見透かすように、柔らかな光でサヤを包んでくれる。きっと遠い昔から、月の光はサヤの密かな恋を見詰めている。
静かに…、静かに…。全てを知りながら、ただ黙って見守っていてくれる。
サヤは、少し冷える夜の風に身を任せていた。
入院患者用の薄い寝巻きに夜風が染みる。少し寒いと感じるけれど、『診療所』の屋上には他に人影も無くて物思いに沈むには丁度良い。
 
月と、二人きり…
そう考えて、自分がもう一人ではない事に気付いた。
まだ何の変化も無い腹部を、サヤはそっと撫でた。本当に、ここに命が宿っているのだろうか…と言う信じられない気持ちと、確かに命の存在を信じている自分が、サヤの中でせめぎ合っている。

産みたい…と強く思う。
『彼』の子供達だ。
小さな小さな二粒の細胞は、サヤの中でただじっと時を待ち、眠っていたのだと、サヤは不思議な本能で悟った。そして今、目覚め…活動を始める事で、頼りない母を励ましてくれている。少なくともサヤにとって、二つの命は淡い記憶しか持たない自分を『彼』と繋いでくれる、たった一つの確かな絆だ。
会いたい…出来る事なら貴方に、会いたい。
この二つの愛しい命を授けてくれた大切な貴方に…
『彼』の子供達を産みたい、けれどその反面、産んで良いのだろうかと不安にもなる。『彼』の名前さえ覚えていない自分が…母親になっても良いのだろうか。
そして紛れも無く…お腹の中の命は翼手であるというのに…。
それでも、自分は胎内に宿る二つの命にこの美しい世界を見せてやりたいと強く思う。密やかな月の光の強さも優しさも、眩しい朝陽の温もりも…
このお腹に宿る命は、何よりもサヤにとって自分が生まれ生きてきた証のようにも感じられた。人々の幸せを奪い、破壊するばかりで、何も生み出さないと思っていた自分の命にもまた別の意味があったのだと…。
ディーヴァも、そう思ったのだろうか…。
欲しても、欲しても、手に入れる事の叶わなかった家族の存在を感じて。
 
 
風が強まった。
あまり冷えたら、やはりお腹の子供達に良くないのだろうか…。
それとも…これくらいは平気なのだろうか…。
サヤは冷えた体を自分の両腕で抱き締めた。
妊娠と言う事態を想像した事さえ無かったから…全く、解らない事だらけだった。
黙って病室を抜け出してきたから、ジュリアが心配しているかも知れない。
一瞬…そんな思いがサヤの脳裏を過ぎった。けれど、まだあの無機質な病室へ戻る気にはなれなかった。


月の優しい光に、晒されていたい。
もっと、もっと…傍で…
 
 
 
 
 
 
一陣の風が吹いて…
 
 
 
 
 
 
………不意に、空気が変わった。
 
 
 
 
どくん
どくん
どくん
どくん
急に胸の鼓動が早くなる。
ざわざわと夜風が騒ぎ出す。
夜の闇に射す一条の月の光がそうであるように…、サヤを包む空気がみるみる浄化されてゆくのを感じる。
夜の大気も、風も、緑も、サヤを取巻く全てのものが、まるで一斉に歓喜するかのように…
 
 
 
 
コツン…
 
 
 
 
背後で小さく靴音が響く。
振り向くのが恐い。
これは、また夢なのだから…
振り向いたら、貴方は消えてしまう…。
サヤはきつく瞼を閉ざした。
 
 
「夜風が障ります。サヤ…」


穏やかな、優しい声が、サヤを呼ぶ。
焦がれて、焦がれて、焦がれて…
それでも、手の届かなかった…貴方…
 
 
これは夢なの…?
 
 
震える声で、サヤは答えた。
「ごめんね…、ごめんなさい。…私…」
優しい腕が、背後からそっとサヤの肩に触れた。
「貴方の名前さえ…」
記憶の彼方に手放してしまったの…。
こんなに愛しいのに…こんなに愛しているのに、その名前すら…思い出せない。
「名前など…必要ありません」
「でも…」
「サヤ…謝らないで。謝るべきなのは私なのですから。長い間…貴女を独りにして…苦しめてしまいました」
肩に触れる指先が僅かに強張って震えた。
「ううん…独りじゃなかったわ…。貴方はずっと傍に居てくれたんでしょう?」
いつも、どんな時にも、確かめる術は無くとも、彼の気配は傍にあったのだと、今こうしているからこそ、そうと知ることが出来た。肩に触れた指が滑る様にサヤの腰に回された。
背後からそっと抱き寄せられると、サヤの体はすっぽりと男の体温に包まれた。
懐かしい、抱き寄せられるその心地良い感覚。
ああ、私は彼を知っているの…
彼の体温がじんわりとサヤの肌に馴染んでゆく。
「最初から…離れられる筈など…なかったのです。貴女は私の全てです」
「…いつも、どんな時も、優しかったね…。この腕も、貴方の体温も…、私ちゃんと覚えてる…私の体は、貴方を知っているの…。それなのに…ごめんなさい」
耳元で、溜息のように、男が囁く。
「謝らないで…、例え傷付いたとしても、…全てを思い出す勇気がありますか?サヤ」
男はサヤを抱き寄せたもう片方の手を掲げ、その指先に自ら牙を衝き立てた。
ぷつりと皮膚が破れ、真っ赤な鮮血が滴り落ちて、サヤの鼻先を甘い血の香りが掠めた。
思わず喉が鳴るのを、サヤは押さえ切れない。
「サヤ…。目を開けて…サヤ」
促すように囁かれ、けれどサヤは激しく首を横に振った。
「嫌よ。目を開けたら…夢が覚めて、貴方は消えてしまうもの…。このまま貴方に抱かれていたいの…私は…」
「私は消えたりしません。サヤ…もう二度と…」
貴女から逃げたりはしません…と、耳元に熱い吐息を吐いて…
「……………」
尚もそれを拒むように、きつく目を閉じるサヤの頤にそっと指を添える。
「サヤ…唇を…」
サヤは、正面から抱きすくめられた。
「愛しています…サヤ…」
だから、受け入れて…全てを…
驚かさないようにそっと触れてくる優しい唇。やんわりと、ざらついた舌がサヤの唇を割り、それと共に熱く甘い男の血がサヤの口中に広がった。
最初は舐める様だったそれが、量を増し、サヤの喉を潤してゆく。
サヤは自分を抱き寄せる胸にきつく爪を立て、じわじわと全身に広がってゆく甘い痺れに耐えた。足元が危うくなる。崩れそうになる体を咄嗟に優しい腕が支え、抱き上げられるとふわりと体が軽くなったようで…、その感覚はあの夢の中の心地よい浮遊感に良く似ていた。
「サヤ…」
穏やかな優しい声。
それは愛情に満ちて、サヤの記憶の紐を少しずつ解いてゆく。
 
 
 
 
あの日、あの廃屋で…。
どうしても、どうしても、貴方に愛された記憶が欲しくて、私は…。
 
 
「ごめんなさい…。ごめんね…」
きつく閉じたままの瞼から、あの日の涙が零れ落ちる。
「サヤ…?」
「だって…ずっと好きだったの…。ずっと。貴方に傅かれ、守り庇われて…、貴方にとって私は、呪われた血が結んだ主でしかなかったかも知れない。それでも私にとっては…」
「サヤ…誤解です…それは…」
「ディーヴァを倒して、このまま死ぬのが私の運命なら…、その前に…一度で良いから、貴方に愛されたかったの…。一人のただの女として…」
「サヤ…」
「ごめんね…。…貴方の気持ちも考えずに…」
サヤの唇から、ほろほろと謝罪の言葉が零れ落ちる。この腕の中に居ると、あんなに手の届かなかった過去の記憶がまるで昨夜の事のように蘇ってくる。
「サヤ、貴女こそ…、あれは貴女にとって暴力にも等しい行為だったのではないのですか?私は……貴女を…」
自分の欲望のままに、貴女を傷付けた…のだから…
「………………………ハ…ジ…」
ハジは、それに応えるように抱き上げたサヤの体を強く両腕に抱き締めた。
折れてしまいそうな程、華奢なサヤの体。
ハジの腕の中で、サヤは激しく頭を振った。
「違う…、違う…。私は傷付いてなんか…ない。傷付いたりする筈ない。私がそれを望んだの…。ずっと貴方が…欲しかったの…ハジ…」
一面は音も無く、風すら吹かず、ただ青く白い月の光が辺りを照らしていた。
「好きよ。ハジ…、私も貴方を愛しているの…。あの日瓦礫の中に消える貴方の姿を見失って、私の心も死んでいたのね…。ハジが居ない未来なんて…生きている価値も無いのに…」
貴方が『生きて』と言ったから、私はただここに居たのね…
サヤは優しくそう告げて、うっすらと瞼を開ける。
それ以上もう言葉にならない程…愛しくて。青白い月を背後に背負った男の頬に指先を沿わせて、サヤは首筋を伸ばすと自らハジの唇を求めた。
うっすらと触れるだけの口付けは、ほんの数瞬で離れてゆく。
サヤからの口付けはいつも、身を溶かす程に甘くて、切なくて…
ハジが名残惜しく唇を追う狭間で、サヤは思い出したように、嬉しそうに微笑んだ。
ハジの指先をそっと腹部に導き、
「ここに、ハジの赤ちゃんがいるの…。双子よ。ハジ…私達…家族が出来るのよ…産んでも良いんだよね?」
だからもう、二度と離さないで…と、サヤはハジの胸に顔を埋める。
「ハジ…ハジ…」
サヤは漸く手に入れた魔法の呪文のように、何度も繰り返しハジの名前を呼んだ。
ハジはそれに応える様に、腕の中の華奢な体を抱き締めた。
臆病な自分は、彼女の気持ちを確かめる術さえ忘れていた。
この想いが報われる筈もないと決め付けて…
 
 
私は赦されるのですか…?
 
 
この三十年もの長い間、その優しい声で、ずっとこの名前を呼んで欲しかったのだと…
本当はずっと寂しくて、ただそれだけが自分の願いだったのだと…
恭しく頭を垂れて、サヤの存在を確かめる。
一度は死を覚悟した、あの瓦礫の中ですら…、自分はサヤに守られていた。
ただ、彼女の傍にありたいと…
それだけを願っていた。
「愛しています。サヤ…、貴女も、お腹の子供達も…私が守ります…。サヤ…」
腕の中のサヤが、優しくハジを見上げて微笑んでいた。
細い指先が、そっとハジの目元に触れる。
「泣かないで…ハジ。ずっと独りにしてごめんね…」
触れられる事で、やっとその涙に気付くほど、ハジの心は乾いていた。
 
 
 
 
 
二人は離れていた時間を埋めるように、どれだけそうして擁きあっていたのか…
やがて東の空が、うっすらと白み始め、月の光はその力を失うように、朝の気配の中に消えていった。眩しい太陽の光が辺りを照らし、優しい温もりが二人を包み込んだ。
目覚めれば…また、ハジが儚く消えてしまうのではないか…
サヤは恐れるように、うっすらと瞼を開いた。
「ハジ…」
サヤの体を夜の冷気から守るように…すっぽりとその体を抱き締めていたハジもまた、その気配に促されるように薄く瞳を開ける。長い睫毛に縁取られた双眸は…彼が無口な分雄弁で、そうして見上げるとまるで晴れ渡った空の色にも似ていた。
「綺麗…」
サヤがうっとりと小さく呟くのに、ハジはそれが何の事だか解らないまま…恥ずかしそうに、微笑んだ。
OMOROに、帰りましょう…」
「ん…きっと、カイが心配してるね…」
 
 
サヤは自分を抱き締める優しいハジの腕に、強くしがみ付いた。
 
 
もう、離さないで…
ううん………もう、私が離したりしないから…
…もう二度と…
 
サヤはぎゅっとハジの袖を握り締めた。
優しい腕が応えるように、サヤの体を抱き締める。
 
夜が明けて、眩しい朝陽が射しても…
もう二度と彼は淡い月の光の様に消えてしまうことは無い。
 
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20061111
ええと、やっと完結(出来たのか?)。
沙奈さまからリクエスト頂きましたSSの三作目「暁に咲く花…」で…ございます。
沙奈さま、すみません。なんかこのまま、逃げ出したいです。
ええとええと、どんなリクエストを頂いたかと申しますと、30年後、サヤの妊娠ネタで+サヤの記憶喪失+サヤを想って身を引くハジ+カイとハジの友情的な…。って…書けて無いじゃん!ごめんなさい。ええと、今回のマイテーマ(なにそれ?)はちょっと後ろ向きで女の子の気持ちに鈍いハジ…とか、今決めました。
理想は、「This Love」なんだけど、…い、いけてない。
妊娠すると血の力は失われるとか、ハジとでは妊娠しない(いや、出来てよ!)とか色々ありますけど、まあ、我が家会議(私&ダンナ)の間では強引にアリと言う事で(笑)色々要らない設定まで考えました。で、でも今回は関係ないですから、生まれてくる子供の事とか…ここまでで出てきません。
ああもう、言い訳すら思いつかない。取り合えず、ラストシーンは朝陽に包まれて…と考えていたので、タイトルは先に適当に決めてしまったので、花ってあんまり関係なかったかも…。私の勝手で前中後編に分けてしまったので、余計に慣れなくって勉強になりました。
沙奈さま…せっかくリクエスト頂いたのに申し訳ありません!どうかお許しください!!
こんなハジ×サヤとカイですが、沙奈さまに捧げさせていただきます。
どうもありがとうございました!