たいとるなんてありません。
単なるエロ連載です。
≪7≫


「…ハジ」
強い力で細い腕を掴むと、ハジは小夜の体をその胸にかき抱いた。
そして薄く開いた赤い唇を自らのそれで塞ぐと、いつもなら躊躇いがちな小夜の舌先が先を急ぐようにハジの唇を割った。
ハジは拙い小夜からの口付けを受け止め、口中を彼女の好きにさせながらも、時折きつく吸うように舌を絡めて、徐々にその主導権を奪い返した。
延々と続く口づけの合間に、ハジは小夜が途中まで外したシャツのボタンを最後まで外し、白い胸を晒した。
ハジの背中を抱いていた小夜の腕が気配を察して、彼の肩からスルリとシャツを脱がす。
「んんっ…ハジ…」
「小夜…?」
先を急くように、小夜はハジからの執拗な口付けから逃れた。とろんと潤んだ瞳をハジに向け許しを請い、ハジの青い瞳の色が僅かに緩むのを確かめると、小夜はゆっくりと唇を男の首筋に這わせた。ハジの肌からは例え様もない甘い香りがする。
舌先で擽るようにその滑らかな感触を楽しみながら、堪え切れないようにそっと甘噛みを繰り返した。
「…構いませんよ。小夜…」
戸惑う彼女に、ハジの穏やかな声がそれを促した。
大きな掌がそっと小夜の頭部を押さえ首筋に近付けると、小夜は引っ掻くようにしか立てる事が出来ないでいた犬歯を柔らかな皮膚に衝き立てた。
ぷつりと皮膚が破れ、この上もなく甘い彼の血液が溢れ出す。
小夜は一滴も零さないように、どくどくと溢れ出す赤い液体を舌で舐め取り、やがて追いつかなくなると咽喉を鳴らしてごくりと嚥下した。
「………」
声にならない、長く甘い吐息がハジの唇から漏れる。
吸血という行為は、彼らにとってまるで媚薬のようだ。
シュバリエであるハジにとって、小夜に吸血される感覚は性的興奮を伴う。
美しい眉根をきつく寄せてハジはその甘美な波に耐えた。
けれど、小夜は一口ハジの血液を飲み下すと、すぐに顔を上げた。赤い唇の端に付着した血を舌先で猫のように舐め取り、じっとハジを見詰める。
「…もっと気持ち良くしてあげたいの…」
冷たい大理石に床に崩れ抱き合うその耳元に、小夜は消え入りそうな声で小さく『お願い…』と呟いた。返事を待たず、有無を言わせずにハジの体を床の上に押し倒してゆく。
勿論小夜の力で強引に出来る事ではないが、そう見詰られればハジに拒絶は出来ない。
ゆっくりと体を倒し、ハジは大理石の床の上に仰向けに横たわった。
そして間を置かず、一糸纏わぬ姿のままの小夜がハジの上に覆い被さる様に体を屈めた。
今付けたばかりの首筋の傷はもう塞がっている。
小夜は自分がいつもして貰うように、ハジの前髪を丁寧に指先で梳いて整えると…青い瞳が僅かに困った様子で見上げているのが可笑しくて、そっと唇を重ねてハジに応えた。
白く滑らかな皮膚の上を確かめるようにして丁寧に唇で辿る。
耳元を擽るように、そして首筋から鎖骨へ、細い印象なのに触れると案外にも広く厚い胸、引き締まった腹部…たどたどしく辿るだけで、そのぎこちない愛撫にさえ時折堪え切れずハジの唇からは柔らかな吐息が零れていた。
…ハジ…気持ち…良いの?
くっきりと割れた腹筋の先、羨ましくなる程引き締まった下腹部、そして浮き出た腰骨。
先程小夜が自らの手で下ろしたファスナーの中は、見た目にも苦しげに快感を主張している。
「小夜…」
優しい声が頭上から小夜を呼ぶ。
その声に勇気付けられるようにして、小夜はハジの黒いスラックスに指を掛けた。
勝手が判らずに手間取りながらもハジが腰を浮かせてくれるのに合わせてそれを脱がす。
けれど、ここまでしておきながら小夜は次の行動が起こせずに固まってしまった。
ハジを気持ち良くしてあげたい。
その気持ちに嘘はないのに、下着越しとは言え生々しいハジのそれを目にした途端、先程までの自分の痴態がまざまざと脳裏に蘇ってきたのだ。
ハジのそれが小夜の一番奥を突き上げる時の恍惚と一体感。
理性の欠片もなく、嬌声を上げていた…その自分のものとは思えない甘さ。
先へ進む事も引く事もできない。
「ねえ…ハジ………どうしたら、良いの?」
思わず助けを求めるようにハジを呼ぶと、ハジは珍しく小さく声を上げて笑った。
「…小夜。ここまでしておいて…」
『知らない』はないでしょう?と。
「……だって、………恥ずかしい」
「小夜…。全部…脱がせて…?」
恥らう小夜に、ハジは仰向けのまま腕を差し伸べて招いた。
小夜は招かれるままに移動すると、そっとハジの頬に唇を寄せた。
「全部脱いでと仰ったのは小夜の方ですよ…」
「…だって」
細い項を抱いて、ハジは小夜をぐっと自分に抱き寄せた。そのまま小夜の片手を取るとそっと下に導いた。
「脱がせて…小夜」
「ハジ…」
項を抱いた手に力がこもり引き寄せられ、ハジの甘い唇が小夜を襲う。
優しく啄ばむように繰り返し触れて、次第に…その口付けに熱が篭ってゆく。
息を継ぐ合間にハジが訴える。
「早く…楽にさせて下さい。小夜」
こうしているだけで、ハジの下肢の熱は上がる一方だというのに、小夜はまるでそんな事に頓着なく…まるで焦らすかのように恥ずかしいを繰り返す。ハジにとってはそんな姿もまた小夜の魅力の一つではあったが、このままでは辛いのだという事を知って欲しい。
「ハジ…」
促され、小夜はハジの下着にそっと指をかけた。
視界に納めずに、ぴったりとしたそれを脱がすのはなかなか難しい。けれど、半分はハジの力を借りて、小夜はゆっくりとそれを下ろした。
恐る恐る…無言で促されるままにその逞しいものに指を絡めると、まるでそれ自体が生き物であるかのように、大きくびくんと揺れた。
指で触れることで初めて知るその形状。
不思議な先端の括れに指先を掛けると、小夜は無意識に緩々と摩った。
その瞬間ハジの全身が揺れて、形の良い眉が尚更苦しげに寄せられる。
「小夜…あなたという人は…」
「ハジ…?」
ハジは苦しげに大きく息を吐くと、困ったように微笑んで小夜の前髪を梳いた。
「…天然ですね」
「………何…?」
「解らなくても、良いのですよ。小夜…」
ハジの胸元に崩れるような姿勢で横たわる小夜に、小さく囁く。
「上に乗って…小夜」
伸ばした片手で小夜の丸い双丘を撫でて確かめる。
ゆっくりとその狭間に指先を忍ばせると、小夜のそこは先程の名残で十分に潤っている。更に深く指を進め、その場所に中指の先端を含ませると、小夜が小さく「あん…」と鳴いた。
「また…ここに入れて欲しいのでしたら…私の上に乗って下さい…小夜…」
入り口を探る指先がゆるゆると蠢き小夜の花弁を弄ると、新たに溢れ出した体液が其の指を伝い始める。
小夜は堪え切れず腰を揺らすと、薄紅色の頬を更に高潮させて、ゆっくりと体を起こし…ハジに言われるまま、男の体に覆い被さった。白く艶かしい曲線を描く太股で、ハジの腰を挟む様に跨ぐ。けれどまだそのそそり立った先端に触れる事すら出来ず腰は浮かせたままだ。
ハジはそんな小夜の細いウェストを濡れた片手で支え、反対の指先で小夜の胸の赤い果実を摘むようにして揉みしだく。
「…っは、ハジ…止め…て…。待って…お願い」
「小夜。…自分で出来ますか…?ゆっくりで構いませんから」
「…ん、ハジ」
小夜はぎゅっと目を閉じると、ハジの先端に指を絡めた。僅かに腰を下ろすと、ぬるりとした感触が茂みに触れる。小夜は支えてくれるハジの腕を頼りにそっと自らの入り口を探るようにして、腰を揺らした。
逞しいハジのそれに指で触れると、受け入れるのはとても無理なように思えてくるというのに、二度目の体は予想以上に潤い柔軟で、すんなりとハジを飲み込んでゆく。
大きな圧迫感が小夜を襲う、けれどそれは小夜が待ち望んだ感覚でもあった。痛みというものはほとんど感じない。しなやかに背中を反らして、小夜は一息に腰を下ろした。
「んんっ…あ…あ…ハジ…」
甘い声に応える様にハジが大きく腰を動かすと、小夜は自身の重みで一番深いところを突き上げられる。
全身がぶるりと大きく震えた。
たったその一突きで、更に小夜の内部から蜜が溢れ出した。密着した太股までがいつしかぐっしょりと濡れている。浮かせた腰をハジは両手で支え直し小夜を促すと、小夜はぎこちなく腰を浮かせ再びハジの上に落とす。
「上手ですよ。…小夜」
「……ん、駄目。…ハジ…力が…入らないの…。や…やんっ…」
小夜が答える合間にも、ハジはタイミングをずらすように腰を突き上げる。
「…綺麗ですよ。小夜…」
見上げるハジの瞳が優しく緩んだ。
「小夜…指を…」
「え…?」
「もっと…乱れた貴女が見たい…。小夜」


                         続く。
                                 某所TOPへ