くーままさまのお宅のロジウラに書かせて頂きました。
元々は、私がくーままさまのお描きになった一連の
ハジ小夜イラスト(大人向け〜)が元になっております。
何回かに分けて投稿させて頂いたものを、今回、まとめて
掲載するにあたり、元になりましたくーまま様のイラストも
がっつり頂いて参りましたので、併せてお楽しみください。
勢いだけで書いてしまったSSです〜、何かと?な部分も
あるかと思いますが、広い心で一つよろしくお願いいたします!

くーままさま、私の勝手な我儘でSS書かせて下さいまして
どうもありがとうございます!
そしてイラストも快く掲載の許可を下さいまして、すごく嬉しく思います。
いつも大きな萌えを本当にどうもありがとうございます!


激情 〜くーまま様に捧ぐ〜


「っ!…やっ!!…止めて…」
背後で玄関ドアのしまる音がした瞬間、腕を掴まれた。 
抗い難い力で手首を掴まれると腕の中に抱き寄せられ、逃れる間もなく唇を唇で塞がれた。
買い物帰りの大きな荷物が三和土に落ちて買ったばかりの赤いリンゴが零れる。
いつも穏やかな彼らしくない、強引で性急な行為に小夜はたじろぐばかりで抵抗する余裕すらなかった。逃れられないよう後頭部を抑え込んだ掌の強さ、甘さの欠片も無く口中を蹂躙する口付け。
ハジは崩れ落ちそうになる小夜の体を軽々と片腕で支えると、そのままずるずると床に押し倒してゆく。
そこはベッドでもなければ、リビングのソファーですらなかった。
何が、彼の逆鱗に触れたのだろう?
最初は何気ない会話だった筈なのに…。

背中に当たる硬いフローリングの感触。
見慣れない玄関の吹き抜け天井がのし掛かってくる男の肩越しに見え隠れして、小夜はまだ自分達が靴すら脱いでいない事に驚愕していた。

長い口付に息が上がる。苦しくて身を捩ると漸く解放されて息を継いだ。ほんの数瞬小夜の潤んだ瞳をじっと見詰めていたけれど、何も言わないまま再び首筋に唇を落とした。
冷たい指先がウェストを探りカットソーとキャミソールを一気に首元まで捲り上げると、シンプルなブラもためらう事無く擦り上げる。
素肌が露出すると、触れた空気の冷たさに小夜は我に返った。
「ハジッ!止めて…どうして…こんな…」
ばたばたと抵抗する度に膝丈のスカートが捲れ上がり、太腿が露出する。
「………小夜」
低く押し殺されたその響きは甘く狂おしい。
「小夜…。……貴女は…何も解かってはいない」
吐息と共に細い首筋を牙で甘噛みされると、耐え切れず小夜の背が大きくしなった。
覗き込んでくる青い瞳は、乱暴な行いとは相反して悲しみに満ちている。
どの言葉が、その引き金になったのかは解からない。
けれど間違いなく…いつも優しくて穏やかなハジにこんな瞳を…こんなに悲しい瞳をさせたのは自分なのだと思うと、小夜の胸はキリキリと千切れんばかりに痛んだ。
小夜はふと抵抗を緩めた。
ハジの瞳は小夜に抵抗を許さない。…それだけの悲しみを帯びていた。
小刻みに震える小夜の唇を、再びハジが吸った。応える事は出来なかった…ただ嬲られるままに蹂躙を許す。いつもなら、どんなに小さな小夜の変化にさえ敏感なのに、まるで気付いていないかの様に、ハジは一向に構わず小夜の唇を貪った。
小夜の抵抗は止んだ。





しかし、尚もハジは小夜の両腕を床に押さえ付けた。
まるで征服者の様に小夜の腕を拘束したまま、仰向けにされて薄くなだらかになりながらも柔らかく揺れて誘うバストに牙を立てる。白く滑らかな皮膚がぷつりと破れ、小さな痛みと共に真っ赤な鮮血が一筋流れ落ちる。ハジはうっとりとした表情でそれを認めると、赤い舌先を伸ばしてそれを舐め取った。
シュバリエであるハジにとっては、かぐわしい芳香を放つ始祖の鮮血。
「う…うぅ…」
やがて…喉の奥からくぐもった呻きが漏れる。
次第に吐息が荒くなり、小夜の腕を拘束する力が増してゆくと、ハジの美しい白い指が徐々にその色合いを違え、翼手のそれに変貌して行く。

……ハ…ハジ…

胸の傷はハジの口中に僅かな甘みを残してすぐに治癒する。
ハジはもう牙を立てる様な真似はせず、傷跡のないなめらかな乳房に唇を落とした。
「あ…あぁん…。……や…嫌…」
きつく乳首を吸われると、つんと甘い痛みが小夜を襲った。
こんな状況であるにも拘わらず、いや…こんな非日常的な行為であるから尚更なのか…小夜の中心はうずうずと甘く潤み出す。じゅんと蜜が溢れるのを感じながらも、喉の奥から零れるのはどうしても拒否の言葉で、小夜自身どうしていいのか解からないまま、ハジの与える性急な愛撫の前に理性が崩れてゆくのを感じていた。
「…ハジ」
苦しげに零れる呼びかけに、ハジがふと小夜を覗きこむ。
先程と変わらず、その瞳の色は深い悲しみに沈んだままで小夜は言葉を繋ぐ事が出来ない。
「貴女は…何も解かっていないのです。……小夜。……貴女自身が始祖でありながら…翼手の事も、そして私の事も…」
「ハ…ジ…」

……そんな事を…言わないで…。
…貴方を、愛してるの…

「ハ…ジ…」
ハジはふいと視線をそらすと、再び行為に没頭した。
小夜の清らかな白肌に余すところなく唇を落とし、赤い痕を残してゆく。しかし、始祖である小夜の体の治癒力はそんな艶めかしい情事の証しを許す筈も無く、白い肌に散る赤い花弁の様なそれは見る間に薄くなり消えていった。
誰も汚す事など出来ない、小夜は一輪の花だ。
しかし頭では理解出来ても、今のハジの感情はそれを認める事が出来ない。
小夜の快感など微塵も意識しない荒々しい口付を繰り返した。高い位置にある磨りガラスの窓から降り注ぐ昼間の日差し…柔らかな影を落とす魅力的な裸体。
華奢な首筋からなだらかに続く両肩、そして浮き出た鎖骨。豊かな乳房とその先端の、まるで小さな蕾の様な赤い乳首…くびれたウェスト、捲れ上がったスカートから覗く男を誘う様な太腿、美しい脚線。
その全てを自分のものにしたい。
ハジの中で、普段は無意識のうちに抑え込まれていた制服欲がむくむくと鎌首を擡げる。
どれほど「愛しています」と彼女に愛を囁いても、どれほど献身的に尽くしたとしても、本当の所で小夜はその意味を理解し切ってはいない。
真実、自分には小夜が全てだというのに…。
そんな風に思う自分が、もう狂っているのだろうか…。
人として生まれながらも、こうして身も心も翼手となり果てた自分は既に化け物でしかないのだろうか。
始祖でありながら、人として育てられた小夜の方が、余程人間としての心を持っている。
しかし…。
ハジは心の中で自嘲する。
それでも良い。
いや、それはもう疑う余地のない事実なのだろう。
小夜のシュバリエである自分にとっては、小夜だけが全て…。彼女さえ居てくれれば、この世がどうなろうと構いはしないのだから…。
瞼の裏が熱くなるのを感じてハジはきつく瞼を閉じた。
脳裏が煙るほど小夜が欲しい。
ハジは堪え切れない様にスカートのホックを外し、乱暴にそれを取り去った。
同様に彼女を包み込む頼りないシルクの下着をも千切り捨てる。
嫌々と体を捩る小夜の抵抗を難なく抑えつけ、細い両足首を掴む。
ハジは躊躇う事無く、欲望のままに大きく足を開かせた。
膝を折る様に持ち上げると、小夜の細い腰までもが浮き上がる。
「や…嫌っ!止めて…見ないで…お願い…ハジ…」
最早、小夜の懇願は涙声に変わっていた。
自分の膝の上に抱える様に引き寄せると、ハジのすぐ目の前にあられもなく開かれた小夜の陰部が晒される。その部分をうっすらと覆う黒く淡い恥毛、頭髪とは違い緩く縮れたそれは既に濡れそぼっていた。
赤く充血した美しい肉襞。
ハジはその中心から大量の蜜がとろり溢れ出す瞬間を目にすると、僅かに残っていた理性が脆くも瓦解してゆくのが解かった。
「小夜…乱暴にされても、貴女は感じるのですね…」
まるで揶揄する様なハジの台詞に、小夜が凍りつく。
「………っ!…そ…な…」
彼らしくない失礼な発言に声を震わせる小夜に構わず、ハジは誘う様にひくひくと収縮を繰り返すその場所へ、唇を寄せた。





「嫌っ…嫌よ。………やめ…て…。お願い…どうして…」
「貴女が…いけないのですよ」
「ど…して…?……ひゃ…んぅ…あぁ…」
細く尖らせた舌先が潤んだその中心に押し当てられると、強引にねじ込まれる。
思いがけず長いそれが蜜をかき出す様に蠢いくと、小夜はその刺激に思わず腰を浮かせた。
「…ああっ…ん。…そんなに…しないで…。ハジ…ハジ…」
きつく吸われると、小夜の耳のも明らかな水音が届く。快感と苦痛とは紙一重で小夜はぞくぞくと震える背筋を堪える事が出来ないまま、甘い声を漏らして泣いた。
「止めて…。こんなの…嫌…。嫌よ…ハジ」
溢れ出した涙が眼尻からぽろぽろと零れ墜ちて髪を濡らした。しかしそんな小夜の懇願にもハジの行為は止まなかった。小夜の足首を拘束した腕の力は緩む事がない。
まるで犬の様に小夜の股間に顔を埋め…ハジは小夜を貪りながら、不意に顔を上げた。
「気持ちが良いのでしょう?…素直に、認めたらどうです?」
例えどんなに体が感じても、この状況では素直にそれを認める事など出来る筈がなかった。
…それなのに。
「や…ん、や…あぁ…ん。…も、駄目…ハジ…。ハジ…ィ…」
「小夜…」
そう名前を呼ばれ、敏感な突起に舌を絡められると、小夜の体はとうとう主を裏切った。
コントロール出来ない衝撃が小夜の背を電流の様に走り抜ける。
一気に高められた快感が堰を破り、小夜はあっけなく頂点に達していた。大量の蜜を溢れさせながら、全身を震わせる。達
した脱力感と疲労感、そしてハジに対する愛情と悲しみの全てが溢れ出した。嗚咽が止まらない。
酷くみじめな気持が小夜を支配していた。
こんな風に一方的に扱われ、達した事など今までに一度も経験した事が無かった。
ハジはいつも優しくて、小夜の気持ちを一番に考えてくれる。
ベッドの中でだって、それは変わらない。
大切に…それは大切に抱きしめて、その腕の中で共に絶頂を迎えるのだ。
ぜいぜいと上がる吐息と、止まらない涙…乱れた髪が視界を覆う。
身なりを整える余裕も無く、ぬるぬると自らの蜜で濡れた股間ときつく閉じると、玄関のフローリングの上で小夜は漸く解放された体を、丸める様にして自らの腕できつく抱き締める。
どうしてこんな事になってしまったのか…、回転の鈍った頭で必死に考える。

しかしこれで、終わったのだ。
きっとハジも…。
小夜のそんな期待を裏切る様に、強く腕を引かれる。
ハジが、その悲しい瞳を真っ直ぐに小夜に向けて告げた。
「…まだ。終わってはいないでしょう?もっと…心地良くして差し上げます…」
更に腕を強く引かれ、その胸に抱かれる。
その広い胸の感触はいつもと変わらないというのに優しさの欠片も感じられず、小夜は悪夢でも見ている様な気持で、腕を彼の胸について抵抗した。
しかし、それでも尚拘束が解けない事が解かると、泣き濡れた赤い瞳でじっとハジを見上げた。

何が彼をこんな風に怒らせてしまったのだろう…。
ただそれを教えて欲しかった。
けれどもう、その「どうして…?」と言う言葉すら喉の奥に張り付いてしまったかの様に、もう声にはならない。いつも穏やかなハジをこんな風に怒らせてしまったのが自分だというのなら、幾らでも自分は彼に謝罪する。けれど何が原因なのかすら、話して貰えないのであれば、小夜には為す術などなかった。

「……ハジ…」
やはり答えないまま、ハジは彼女の体をフローリングに押し倒した。
小夜を片手で床に押さえ付けたまま、ハジは器用に反対の腕でベルトを外し、自身を露出させる。
抵抗できない小夜の両足を抱える様に広げさせて、既に熱く滾るそれを小夜の濡れた秘所に押し当てた。
「…小夜」
耳元で囁かれる、その声の響きにはどこか切なさが滲んでいた。
ハジが理由も無くこんな暴力にも等しい行為をする人ではない事は、小夜自身が一番知っている。
彼の表情を確かめたかったけれど、この体勢ではそれも叶わなかった。
突然…小夜の思考を遮る様に、良く濡れたそこに、ゆっくりとハジが侵入する。
「……あっ!!ああんっ!!」
その体積にいつもは痛みにも近い、痺れる様な感覚を覚えるというのに、皮肉にも既に一度達した体は十分に解れているのか、痛むどころか侵入する時の僅かな抵抗感すらぞくぞくとした快感にすり替わる。
こんな風に扱われても、ハジに抱かれるのは心地良い。
しかしまともに受け止める男の体重も押しつけられる広い胸板もいつもと少しも違わないのに、ただハジが優しくしてくれないというだけで、自分はこんなにも悲しいのだ。
そして、こんなにも悲しいというのに、自分の体は淫らに貫かれて喜んでいる。
小夜はそんな淫らな自分に耐えられそうも無い眩暈を感じた。
また冷たく拒絶されるのだろうか…。
そんな思いが過る。
それでも堪え切れず、小夜はハジの乱れても居ない白いシャツに縋った。
堪え切れない涙が再びぽろぽろと零れ墜ちる。
「あ…ハジ…ハジ…」
じっと耐える様にして小夜を窺っているのか、ハジは小夜を深く貫いたまま動かない。
ただじっと自分の体を穿ったまま動かない男に僅かな異変を感じながらも、小夜は上にのしかかる男の胸にぎゅっとしがみついた。
じっとハジに貫かれたままの下肢がじんじんと熱を帯び始めるのが解かる。無意識に腰を揺らしてしまいそうになる衝動を、小夜は必死に堪えた。





こんな自分をハジは嫌うだろうか…。
乱暴にされて尚、感じている自分を…。ハジに動いて欲しくて腰を揺らしてしまう自分を…。
それでも小夜は自分の気持ちだけは誤魔化しようがないのだと悟った。
どんなに酷い扱いを受けても、自分はこの男を愛しているのだと…。
長く辛い旅の間に、何度も諦めようと思った。
所詮自分は、ハジにとって始祖なのだから…女として愛される事など…これ以上望んではいけないのだと。
「…ハジ…ハジ…。…好きよ…ハジ…」
しがみ付いたシャツがいつしかしっとりと涙に濡れていた。

その時、不意にハジが身じろいだ。
片腕で体を支えてそっと小夜の髪を掌で撫でると、白い額に躊躇う様に小さく唇を落とす。
「…ハ、ハジ?」
「……小夜。……貴女と言う人は…これでもまだ、そんな事を言うのですか?」
「……………」
「……小夜。こんな事をされても、貴女は…私を許せると?」
緩やかにくねるハジの髪が、一筋零れ墜ちる。
覗き込んでくるハジの表情はいつもと変わらない冷静さを保っていたけれど、彼が今、心に秘めている苦悩は決して小さくはないのだろう。
僅かに潤んだ様な青い瞳の色がそれを物語っている。
ハジはこんな行いをする自分を許せるのか?と小夜に問い掛けるけれど、それならばこんな行為に彼を駆り立てたのであろう…自分の態度をハジはどう思っているのだろう。

許せないから、怒りに任せてこんな事をするの?
次第に溶けてゆこうとする理性に小夜は必死にしがみ付いた。

有無を言わせない力で、強引に押し倒され傷付けられたなら、これは暴力だ。
けれど…これが本当に暴力だというのなら、ハジはどうしてそんな悲しい瞳で小夜を見詰めるのだろう?
どうしてそんな傷ついた瞳で小夜を見詰めるのだろう?

第一最初から、ハジを許すとか、許さないとか…そんな問題ではない。
小夜はそこに至って、自分がハジに対して抱いている感情が怒りではなく、身を切るような悲しみばかりである事に気付いた。
辛いのは行為自体ではなくて…。
問い掛けても、応えて貰えない事が悲しいのだ。
ハジに冷たくされると、小夜の心が悲鳴を上げる。

「ハジ…。だって…私…怒って…ない…よ?」
「…小夜」
ハジの青い瞳に、僅かに驚きの色が混じる。
不安げにすら見えるその瞳に、小夜は微かに微笑んで見せた。
「怒ってなんか…」
「…………」
震える指先をそっと差し伸べて、ハジの額に落ち掛かる黒髪を掬い、その柔らかな毛先にそっと口付ける。
「…ハジ。……怒ってなんかいないわ。……ただ…悲しいの…。ハジに…冷たくされると……私…」
「…………小夜」
こんなに間近にいるというのに、まともにハジの顔を見る事が出来ない。
「……私の何があなたにこんな事をさせるのか…教えてもくれないの…私の事…嫌いになったんなら…ちゃんとそう言って…私…」
頬に零れ墜ちる涙が首筋にまで伝う。それをハジの舌先が辿る様に拭い、唇が白い瞼を啄ばむと、吐息の様な声が小夜の名前を呼んだ。
「小夜…」
はっとする程、押し殺したその響きに小夜はぎゅっと閉じていた瞳を開けた。
「小夜…」
深く響くその声で小夜を呼ばれると、苦しいほどの力で抱き締められる。
「……ハ……ジ…?」
「小夜…小夜…。……小夜…私が貴女を嫌いになる筈など…。…小夜…」
熱に浮かされた…まるでうわ言のように繰り返し小夜の名前を呼んで、しっとりと唇を重ねる。
ふっくらとした小夜の唇を割って侵入した舌先がやんわりと口中を辿ると、小夜の舌に執拗に絡みついてくる。その熱く蕩ける様な口付けに、ハジがいつも心の奥に隠し持っている…本当は熱いその情熱の一端が垣間見えた様な気がした。
「……ハジ?」
指先が体の線を辿り、先程までとは打って変ったかの様に優しく煽る様に小夜の理性を絡め取ってゆく。
「っん…ふ…」
甘く息が上がる。たったそれだけの口付けなのに、ハジに優しくされるだけで散々焦らされた体に火を点けるには十分だった。
一つに繋がった下肢が燃える様に熱い。
「やっ…やん……ハ…ジ…」
小夜が泣いた声を合図の様に、ハジが腰を突き上げた。濡れた内壁を擦り上げ、一旦引き抜いたそれで小夜の一番奥を再び突き上げた。
「小夜…」
体を密着させて、ハジが囁く。
その甘い響きは、先程までの彼の態度が全て自分の妄想だったのでは…と思う程穏やかで優しく、唯一慣れない背中に当たるフローリングの硬さだけがそれを現実だと物語っている。
圧し掛かるハジの重みも加わり、突き上げられる度に背中が悲鳴を上げ始める。
しかし、止めて欲しいとは思わなかった。
ハジを受け止めたい。それが痛みであろうとも、ハジのくれる想いの全てを全身で感じたかった。
白いシャツのままの背中にぎゅっと腕をまわしてしがみ付き衝撃に耐える。
間断なく続くハジの動きに合わせてゆさゆさと揺れる胸の膨らみに、何の前触れも無くハジの指が触れた。
掌で包み込むようにして揉まれ時折爪弾く様に指先で弾かれると、堪え切れずに喉の奥から声が漏れてしまう。乳房の先端からじわじわと広がってゆく甘い痺れは、ゆっくりと小夜の全身を蝕み、中心を熱くさせる。小夜の内部が更に潤みを増したかのか、ハジのそれが滑る様に奥深くを抉る。
「やっ…あん。…ハジ…ハ…ジ…。ああぁ…やぁ…ん。や…だ…駄目…駄目…」
玄関のドア一枚を隔ててそこはもう誰が訪れてもおかしくはない外部なのだと思うと、耳に届く自分の声が小夜には我慢ならなかった。
けれどハジは、まるでわざとそうして小夜を鳴かせようとしているかのように、愛撫の手を休めようとはしない。小夜の声を聞いて益々熱心にその部位を撫で摩る。
「駄目っ…声…。…外に、……聞こえちゃう…」
「小夜…小夜…っ」
「あっ…んん…ぅん」
ハジの唇が、嬌声ごと飲み込むように小夜に口付けた。
そうして唇を奪いながら、ハジは一旦腰の動きを止めると小夜の背中とフローリングの間に片腕を潜り込ませた。小夜は与えられる口付けに夢中で応えながら、きつくハジの首筋に縋る。
床にもう片方の腕を付きハジが体を起こす…背中に回された腕が小夜を支えていた。細い体躯に似合わず、この腕力の強さは、彼が翼手故なのかも知れない。
体が浮くその瞬間ぎゅっと瞑っていた目を開くと、小夜は胡坐をかく様に座るハジの上に乗せられていた。
勿論、下肢は繋がったまま…引き締まった腰を両足で深く挟むようにして、小夜は自分の重みでさらに深くハジを銜え込んでしまう。
「ハジ…待って…。やぁ…ん…」
「……小夜。あのままでは、貴女の背中を痛めてしまう…」
「ハジ…」
じっとその胸に縋りついて下肢からの刺激に耐えるのに、ハジは容赦なく律動を再開する。
小夜の体に負担がかかり過ぎない様に最初はそっと…。
小夜の潤んだ瞳が決して嫌がってはいない事を確かめると、徐々にリズムを上げる。
長い腕ですっぽりと小夜の上体を包み込むように抱き締めて、愛しげにその額に唇を押し当てた。
優しく、規則正しく刻まれるハジのリズムに心地良く揺さぶられながらも、小夜は次第に高まって来る波に意識が霞むのを感じていた。
「あぁ…ああ、あ…駄目…。駄目…ハジ…」
苦痛とは紙一重の強い快感、頂きに上り詰めようとする体を察してか、ハジが不意にそれを阻むようにテンポを落とす…、するともう手の届くところまで高まっていた波が遣る瀬無く小夜を素通りしてしまう。
与えられない事に焦れて、小夜は無意識に腰を蠢かした。
「っ!!ハジ…」
「小夜……まだ、貴女を離したくない…」
彼自身も強い快感に耐えているのか…青い瞳が間近で潤んでいた。
しかし自ら煽っておきながら、小夜に達する事を許さない。
先程からの自分本位な行いに抗議するように小夜がハジの唇に甘く噛みつくと、それはそのまま深い口付けとなる。
くちゅくちゅと音を立てて何度もお互いの口内を行き来する舌先の、その濡れた柔らかな刺激がそのまま溶け合った腰の中心を熱くした。
けれどハジは、きつく締まる小夜の内壁の感触を楽しんでいるかのように、すぐには動こうとはしなかった。
「あ…んんぅ…。お願い…ハジ…。……か…せて…」
すりすりと男の白い首筋に頬を寄せて強請る。
「…もう、限界ですか?」
「……お…願い。ハジ…もう…」
駄目…と、小夜ががくがくと体を震わせた。
涙でくしゃくしゃに歪んだ視界の中で、切なく微笑んだ。
「…も、駄目。……い…か…せて…。ハジ…」

気が狂いそうだ…。
決して泣かせたい訳ではないのに、自分の身の内にある熱くてやり場のない感情を晒せば、自分は小夜を傷付けてしまうばかりなのか…。これまで何度も、崩れかけながらバランスを取ってきたその重い枷がとうとう脆く崩れてしまったのか…。

腕の中で…シャツの胸に縋る様にして…華奢な体が震えている。
ギュッときつく瞳を閉じて、ハジの与える内部からの刺激に健気に耐えている。
目元がほんのりと色付き頬は涙に濡れていて、乱れる様は愛しくて艶やかで…同時に痛々しさも秘めていた。そんな小夜の様子にさえ、猛る己はおさまるところを知らない。
どこか狂気にも似た…枯れる事のない小夜への執着は増してゆくばかりで…愛しています…と何度囁いたところで小夜にはその本当の重みは理解されず、こうして肌を重ねていても小夜が腕をすり抜けて行ってしまうのではないかと不安になる。
小刻みに腰を揺すり上げる…その緩慢な愛撫の最中、小夜が赤く染まった瞳をうっすらと上げた。
「……ハジ。………ハ…ジ…」
既に朦朧とした意識の中で、うわ言の様に小夜がハジを呼んだ。
「…ね…がい…。もう…」
がくがくと震える四肢をハジに巻きつけて、それを懇願する。
「……小夜…」

…それでも、…私は…

ハジは小夜の細い腰を両手で掴むと持ち上げる様に支え、大きく小夜の内を突き上げた。
徐々に追い詰める様に速度を早め、同時に忍び込ませた指先で彼女の敏感な場所を探る。
「っや!!…いやぁっ!……ぁああっ!」
充血したその小さな蕾に指先が触れると、ぬるぬると絡みつく内壁がきつくハジを締め付けた。
散々焦らされ高められていた細い体は、あっけなくその頂へ上りつめた。
自身では制御する事の出来ない大きな波に浚われる様に、その瞬間ハジの腕の中で大きく背をしならせた小夜は、指先までを硬直させて…やがてハジの胸の中へ舞い降りた。
ぐったりとしたその体を抱きとめると、喉の奥から小さく呻くように吠えて、ハジもまた強く腰を押し付ける様に小夜の中にその全てを迸らせると、半ば意識のとんだ小夜の内部が、応える様にハジを締め付けた。

時間が止まったかのような静寂に、荒い吐息だけが響く。

そうして…まるで熱病に罹ったかのような一時は幕を下ろした。
ゆるゆると全身の緊張が解けて、脳裏が次第にクリアになってゆく。
ゆっくりと身じろぐと、それでもまだ一つに溶け合ったままの下肢がぬるりと滑った。
意識を失っているかのように脱力していた小夜が、その瞬間ぴくんと体を揺らしてそっと顔を上げた。





「……ハジ…」
「…………申し訳、…ありません。……小夜…私は…」
落ち着きを取り戻した声で、喉の奥から絞り出すようにハジが謝罪すると、小夜はやや青ざめた顔で小さく首を振った。
「…ハジ。謝らないで…。……愛してるって、言って…」
力のない細い腕がそっとハジの首筋に伸びた。
「…愛しています。…小夜」
潤んだ瞳は既にその鮮やかな赤い色を潜めていたけれど、熱の籠った視線でハジを射ると、やがてゆったりと細められた。
「…他の誰よりも?」
「……私には、貴女だけが、全てです…小夜」
「………私も同じ。……だから、それで…良いの…」
「…小夜?」
首筋に巻き付いた腕で、ハジを引き寄せる。
「いつも…私に遠慮したみたいに穏やかで優しい…本心を覗かせないあなただから、…怖かったけど…でも、嬉しかったの…。こんな風に…強く求めて貰える事が…。………でも、私の…何がそんな風に…」
あなたを怒らせたの?と…唇を強請る様に間近でその青い瞳を覗き込み、逃れられない強さでハジに問う。
「…小夜…私は…」
吐息が触れるほど傍で、ハジは困惑した。
そっと取り繕うように唇を重ねても、小夜は追及を緩めなかった。
「…ハジ。お願い…ちゃんと、話して…」

逃れようのない、切ない瞳がハジを追いつめた。

幼い少年の日…主とその従者として出会った。それは不幸な事故だったのかも知れないけれど、やがてハジは彼女のシュバリエとなり、その願いどおり長い時間を小夜と共に駆け抜けてきた。
それが長年の習慣だからか、それとも彼女を深く愛するが故なのか…二人の関係がいつしか単なる主従のそれを超え対等な恋人同士となり、こうして肌を重ねる様になっても…ハジにはこの瞳に問い詰められれば、結局は撥ねつける事など出来ない。
ハジは口籠り、躊躇いながらも、その重い口を開いた。
「…私は、貴女を愛しているのです」
「…………ハジ?私も…ハジを…愛してる…よ」
それがどうかしたの?という瞳で小夜はハジを見上げている。円らな瞳は既に泣き濡れていたけれど、新たな涙が頬に零れる事はなく、ただじっとその先を促している。
本当に彼女は無意識だったのだと、ハジは改めて自分の内に秘めたほの暗い感情を自覚する。
先程までの乱暴を詫びる様に長い指で見上げる小夜の髪を何度も撫でて整えると、小夜は誤魔化さないで…とでも言う様に、その指先に触れた。
「ハジ…?」
「気が狂いそうなほど、貴女が愛しい。…貴女さえ居てくれるのならば、私は…他に何も欲しくはありません……。…………子供など…」
小夜の瞳が大きく揺れた。
そうして、小夜は自分の言葉を思い出したのだ。


□□□


昼下がりの公園。買物からの帰り道…それはいつもの見慣れた景色だった筈だ。
たわいも無い話をして、帰途に着く。
しかし、春めいた陽気に誘われる様に、二人は目的も無く公園の中を通り抜けた。
「ここを通り抜ければ、近道になるよ」確か小夜がそうハジを誘ったのだ。

□□□

「ハジ…私…そんな…つもりじゃ…」
訴える小夜に、ハジはただ黙って頷いた。

□□□

公園は赤ちゃん達を連れた若いお母さん達の憩いの場所となっていた。
カラフルな色い合いのベビーカー、まだ歩き始めたばかりの小さな子供達。
賑やかな笑い声の傍らを、二人は和やかな気持ちで通り過ぎようとしていた。
その時、二人の足元に転がってきた柔らかなボールを追いかけて、覚束ない足取りの女の子がハジの前でよろけたのだ。
咄嗟にその手を差し出して転び掛けた小さな体をハジは支えた。
まだ一歳になったばかりだろうか…。育児経験のない小夜にはよく解からなかったけれど、ひらひらとしたフリルの赤いスカートが本当に可愛らしい。
突然の出来事に驚いたような表情のその女の子は母親を探すように辺りをきょろきょろと見回し、ハジの顔を見上げ、人見知りする事無く、無邪気な笑顔でにっこりと笑いかけた。
「どういたしまして…」とハジは生真面目に答えていた。
傍らで談笑に花を咲かせていた彼女の母親がそれに気付き慌てて駆け寄ると「ありがとうございました」と二人に頭を下げて少女を抱き上げた。
たったそれだけの事だ。
たった数分の出来事。
小夜は知っていたけれど、ハジは子供にとても好かれる。
一見…怖い様にさえ感じさせる静かな表情も、子供には通用しない。
彼の纏う空気から、彼が本当はとても優しいという事が解かるのだろう…。
だから小夜は、深く考える事無くそう口にしていた。

『赤ちゃん…欲しかったね…』

何気なく目に飛び込んだ平和な日常の風景。
自分には縁のないものだと解かってはいたけれど…。
こんなに、嘘の様に穏やかな時間を過ごすと、時折そんな甘くささやかな夢を見たくなる。
自分達が人であったなら、ごく当たり前の様に手にしていたかも知れない幸せの形。

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酷く冷静な声だった。
「小夜…どんなに深く貴女を愛そうとも…、どんなに深く貴女と体を交えようとも…、私では貴女を母にして差し上げる事は出来ません」
白く平らな小夜の腹部をそっと指で触れて、ハジはそう言った。
「ハジッ…違うの。そんな事…解ってる…。そう言う意味じゃない…」
違うの…と、小夜の指がきつくハジの腕を握り締めた。
「例えそうでも…私は考えずにはいられない。あの時…貴女があの男を選んでいれば…、貴女は貴女の望む幸せを手にする事が出来たのかも知れない…」
「…………。…あの時…………、あの…男って…」
「あの男なら、貴女は子供を儲ける事も出来た筈でしょう…」
「…ハジ…。そんな…」
小夜の脳裏に、まるで太陽が化身したかのような眩しい金の髪が揺れた。
「…ソロモン…。ソロモン・ゴールドスミスを…」
「ソロ…モン…?」
どうしてここに彼の名前が出てくるのだろう?
ソロモンの名前に小夜は混乱する。
妹…ディーヴァのシュバエリエでありながら、彼には随分と助けられ…しまいには彼女を自分の手で打つとまで言ってくれた人。
小夜は優しい笑みを浮かべたソロモンの横顔を思い浮かべた。
ハジは彼の事を、どう思っているのだろう…。
どうして今更…ハジはソロモンの名前を出すのだろう…。
まさか自分とソロモンの仲を疑っていたというのだろうか…、しかし一度として小夜はソロモンに心惹かれた覚えなどない。『花嫁になって…』と跪かれた時も、突然の告白に言葉を失いながら…小夜の心はそれを現実の出来事として受け止める事は出来なかった。
「ハ…ジ…?どうして…?私が好きなのは、昔からハジ一人…だけ…」
自分を抱きしめながら、ハジはそんな事を考えていたというのだろうか…。
ハジが「小夜さえ居てくれれば良い」と言ってくれたのと同じように、小夜にとってもハジが居てくれさえすればそれで良い。もうずっと一緒に生きてきた。その長い時間が教えてくれた筈だ。
自分達には、お互いがお互いにとって無二の相手であるという事を…。
それなのに…どうして今更?
大きな瞳を見開いて、小夜が問う。
ハジは耐え切れずに視線を伏せた。
「彼との仲を…疑っていた訳ではありません。……それでも、貴女にはそんな形の幸せもあったのだと…思わずにはいられません…」
「ハジ…?」
口を挟む隙すら与えず、膝の上で見上げる小夜の瞳にハジは続けた。
「女性として生まれ…人として育てられた貴女に、それを望むなと言う方が無理なのかも知れません。子供を産みたいと願うのは、子孫を残すべく性を持って生まれた始祖の本能でもある筈です」
「…ハジ。…そんな事…」
そんな事無い…と続けようとした唇が震えた。
ハジの瞳がすっと細められる。微笑んでいる様でもあり…しかし泣いている様にも見えるハジの表情に、小夜は言葉を無くし、そっと差し伸べた掌で彼のひんやりとした頬に触れた。
そっと求める唇に、優しい口付けが舞い降りる。
「……人であった頃、私にも確かにそんな幸せを夢見た事があったかも知れない。貴女のただ一人のシュバリエとして、出来る事なら…貴女の願いを、叶えて差し上げたい。しかし、それだけは…私には出来ないのですよ…」
子を生す事が出来ない。
たったそれだけの事だと言うのに…。
その意味するところを思うと、ハジの心はちりちりと焼けつくような痛みを感じる。

『赤ちゃん…欲しかったね…』
本当にあの一言だけが、切掛けだったのだろうか…。
ハジの心の中には、目を背けても誤魔化しきれない、昏い焔が燻っている。

あの男ならば…。
自らの主すら裏切って、小夜の為に生きたあの男であったなら…。
本来、小夜に添うべきだったのは……あの男だったのではないのか…。

しかし、そう口には出せないまま…ハジは曖昧に微笑んだ。
小夜は、そんな事を考えもしないのだろう…。
そんな小夜の明るさ、ひたむきな想い…自分にとって、それだけが救いだと言うのに…。

小夜はじっとハジを見詰めていた。
間近で囁くように告げられたハジの思い。
昔、まだ彼が『人』であった頃、お互いの運命も翼手の存在も、何も知らず、ただ心のままに振る舞えたあの頃…思えば小夜だって、あの頃からハジの事を想っていた。
やがて訪れるであろう別れの瞬間に怯えながらも、ハジと共に生きたいと願っていた。
その願いは叶ったのだ…。
これ以上、何を望めば良いと言うのだろう…。
小夜の生涯で、他の何を失っても…ただ一人傍に居て欲しいと願った人…ハジがこうして居てくれるのだから…。
「…ごめん…なさい。……ごめ…なさい…ハジ…」
溢れ出す涙をぬぐう事も出来ずに、小夜は自分を抱き締める男の胸に縋りついた。両腕を首筋に巻きつける様にして、強く引き寄せて…ただ、ごめんなさいと繰り返す小夜に、ハジは何事も無いように微笑んで見せた。
「貴女が謝る必要など、一つも無いでしょう?私こそ…貴女は何も悪くはないと言うのに、感情に任せて乱暴に求めてしまいました…。体は、痛みませんか?」
「…ハジ。…違うのよ。…本当に子供が欲しかった訳じゃないの…。ただ…少し憧れていたの…」
あんな何気ない幸せの形に…。
「小夜?私は…充分に幸せです。貴女が…こうしてこの腕の中にいる…ただそれだけで…」
満たされるのです…と。
ハジが微笑む…その瞳に先程までの不穏の色はない。小夜は安心しきった表情でその胸に顔を埋めた。
「…私もよ。ハジさえ居てくれたら…良いの…」
小夜の涙は、ハジにとって何よりも辛い。
自分にとっては、この腕の中の…小夜の笑顔こそが何よりも大切なのだ。一時の感情に任せて、彼女を泣かせてしまった事を深く心で詫びながら、ハジはそっとその髪を梳いた。
散らばった食材を目でゆっくりと追いながら、ハジはまだ一つに溶け合ったままであった小夜の体を優しく引き離した。濡れた下肢が心地悪いのか…体を捩る小夜を落とさない様にしっかりと抱き上げる。 
自らのシャツも既に無残な有様だ。
「…すぐにバスタブにお湯を張りますから…」
買い物に出る前は、こんな時間から風呂に入る事になるなどとは予想もしていなかった。
「……ハジも、…一緒?」
気付かれない様に小さく嘆息をつくと、腕の中で耳までを赤く染めて小夜が乞う。
『ええ…、貴女が嫌でないのなら…』と小さく頷いて、ハジは足早に玄関を後にした。
この分では、玄関の後片付けは夜になってしまうかもしれない。

気付けば…いつしか、午後の日差しは陰り始めていた。

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           〜〜〜〜すみません。こんなハジ…ハジじゃない(苦)…と思う。